総務省が8月21日に発表した7月の全国消費者物価指数(CPI)は総合が前月から0.2%上昇幅を広げて、前年同月比+0.3%となりました。また、生鮮食品を除く総合と、生鮮食品及びエネルギーを除く総合はそれぞれ同±0%、+0.4%と前月から変わらずとなっています。

 依然として日本における物価上昇率は低いままであり、総合が押し上げられたのも日照時間不足や長雨などの天候不順によって、生鮮野菜の価格が上昇したことによるもです。

生鮮野菜の価格は統計をさかのぼれる限り、7月としては最高値を記録しており、内訳を見てみるとジャガイモは前年同月比で+52.5%、ニンジンは同+49.1%と非常に高い価格の伸びを記録しています。

 この連載では毎月2本の記事を公開していますが、月の前半は主にクレジットカードのデータを活用して消費動向についてフォーカスしていますが、後半はPOSデータを活用して物価動向から人々の消費行動を分析していきます。

物価変動から仮説を立てていく

 前述した消費者物価指数の品目別の内訳を見てみると、牛乳の価格が低下していることが分かります。7月は前年同月比-0.3%となっています。

 価格は需要と供給が一致する点で決まります。供給に対して需要が上回れば価格は上がりますし、需要に対して供給が上回れば価格は下がります。その考えに基づけば、牛乳の価格が低下した理由は主に2つ考えられます。

①何かしらの理由で牛乳への需要がなくなった。または減少した。
②何かしらの理由で牛乳の生産量が増加した。

 ②について、この半年ぐらいのニュースを遡ってみても、そのようなニュースは見当たりません。どうやら①が理由としては考えられそうですが、消費者物価指数だけではもっともらしい仮説にはたどり着けなそうです。

別のデータから仮説の精度を高めていく

 そこで、オルタナティブデータを活用してみましょう。ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」のデータを見てみます。「日経CPI Now」は全国の食品スーパー1,200店舗のPOSデータをもとに日次の物価や売上高を算出しています。

 5月から8月にかけて、日次別売上高の前年比伸び率は縮小しているものの、価格を押し下げるほど需要が後退したようには見えません。供給も増えておらず、需要も減っていないのだとすると、価格下落の原因は何になるのでしょうか。

 ここで、このデータがPOSデータを基に算出されているという点が重要になってきます。牛乳の需要発生場所は必ずしもスーパーだけではありません。スーパーでの牛乳需要は後退していないが、価格は下がっているとすると、スーパー以外の場所で牛乳への需要が後退していると仮定できます。

 そこで思いつくのは、4月の下旬に農林水産省が酪農家を支えるために、牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費することを推進する「プラスワンプロジェクト」を開始したことです。この時は、新型コロナウイルスの影響で学校が休校になり、本来は給食によって消費されるはずだった牛乳が余ってしまったり、外出自粛による外食産業からの需要が後退したことが背景にありました。

 このように、スーパー以外での需要が依然として弱いことによって、牛乳価格が徐々に下落していっているという仮説が立てられます。

仮説をもってデータを見る習慣をつけよう

 今回は牛乳を一例として挙げましたが、消費者物価指数はその内訳は500品目以上にのぼります。あらかじめ、各品目について仮説を持っておくことで、実際にデータが発表されたときに、自身の仮説が正しいかどうかを検証することが可能になります。

 たとえば、新型コロナウイルスの影響がありそうな宿泊料はどうでしょう。やはり、外出自粛の影響は大きく、今年に入ってから前年比でのマイナスが続いています。

 それでは、「Go To トラベル」キャンペーンの影響は宿泊料にどのような影響を与えるのでしょうか。旅行が促進されて、宿泊料を押し上げる効果があるのか。それとも、キャンペーンによって安く泊まれるということで、宿泊料には下押し圧力となるのか。

7月下旬から開始になっている関係上、次回の消費者物価指数から影響が出てくるはずです。せっかくですから、次回の公表までに同キャンペーンの影響について仮説を立ててみましょう。


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