JTが上場以来、初めて減配することになりました。配当金は、株式投資をする上でのうま味かつ強みでもあり、投資する際の大きな判断材料でもあります。そのため、配当利回りが高い銘柄に投資する方法が注目されてきました。ここへ来て、これまでの投資方法を少し見つめ直す必要があるのかもしれません。

目次

  1. JTやキヤノン、オリエンタルランド、JR東日本などが減配を発表
  2. 日本株の投資家は「インカムゲイン」に重きを置いていた
  3. 高配当利回り株以外の投資方法には、どんなものが考えられる?
  4. どんな人に、どんな投資方法が合っているの?

1.JTやキヤノン、オリエンタルランド、JR東日本などが減配を発表

新型コロナウイルス感染拡大の影響や人々の意識の変化などにより、2020年(2020年度)の決算発表では、減配を発表する企業が相次ぎました。その中には、高配当利回り銘柄として人気を集めていた日本たばこ産業(JT)や、連続増配銘柄として注目されていたキヤノンなどの銘柄もあります。

ちなみに、JTの減配は1994年の上場以来、初めてのこと。2021年12月期の年間配当は、1株当たり130円と前年比で24円減る見込みです。

キヤノンの減配は33年ぶりです。同社では、2020年12月期の年間配当が1株当たり80円と、前年比で80円減少しました。

コロナ禍で業績に大きな打撃を受けたオリエンタルランドや東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)なども減配を発表。ANAホールディングスや日本航空(JAL)は、昨年4月に2020年3月期の期末配当を無配とすることを発表しています。

日本株投資の魅力として、株主優待制度を挙げる人も少なくありません。しかし、この株主優待についても優待内容を“改悪”したり、株主優待制度を廃止したりする企業が出てきています。

「ヤマダデンキ」などで使える優待買物割引券の株主優待が人気のヤマダホールディングスでは、2021年2月4日に保有株式数100株~499株の株主に対する優待内容の変更を発表。変更前の内容を見ると、保有期間1年未満の株主は、3月末時点での株主名簿に記載されている場合に優待券(500円券)が2枚、また9月末時点で記載されている場合には同券が4枚もらえていましたが、変更後は3月末時点の場合に1枚、9月末時点の場合に2枚と、それぞれ半減しています。また、保有期間に応じて贈呈枚数が追加される長期保有優遇制度も廃止されることになりました。

「ガスト」や「バーミヤン」といったレストランなどで利用できる株主優待カードが人気のすかいらーくグループも、2020年12月末基準日の株主優待名簿に記載された株主向けに優待内容を変更しています。2020年6月末までは、100株~299株を保有する株主の場合、6月末に3,000円カード1枚、12月末に3,000円カード1枚で年間合計にすると6,000円相当の株主優待カードを受け取ることができました。それが変更後には、6月末に2,000円カード1枚、12月末に2,000円カード1枚で年間合計金額にすると4,000円相当に減額されています。

2.日本株の投資家は「インカムゲイン」に重きを置いていた

日本株投資の魅力の一つに、「インカムゲイン」があります。インカムゲインとは、株式や債券などの資産を保有していることにより得られる利益で、その資産を保有し続けると、株式の場合では配当金、債券では利子に乗る継続的な収入が期待できます。ちなみに、保有する資産を売却して得られる利益、つまり値上がりによる利益のことを「キャピタルゲイン」と呼びます。

出所:日本証券業協会が行った「個人投資家の証券投資に関する意識調査【インターネット調査】2020年

図表1は、日本証券業協会が行った「個人投資家の証券投資に関する意識調査【インターネット調査】2020年」のうち、株式投資に対する考え方(投資方針)のデータを基に、ALTalk 編集部で独自に作成したグラフです。

これを見ると、「配当・分配金・利子を重視している(配当等の状況によっては売却する)」が19%と、「概ね長期保有だが、ある程度値上がり益があれば売却する」の51.3%に次いで多いことが分かります。

出所:東京証券取引所

図表2は、東京証券取引所1部上場銘柄の株式平均利回り(加重平均)の推移です。これは、時価総額に対する配当金総額の割合を表すもので、下記の計算式から導き出すことができます。

[加重平均利回り=全銘柄の現金配当金総額÷全銘柄の時価総額×100]

これを見ると、2021年2月の加重平均利回り(月中平均)は1.96%であることに加え、ここ数年は2%台半ばで推移していたことが分かります。

2021年3月22日時点で、メガバンクの1年物定期預金の金利(300万円未満)は0.002%ですから、2月の株式平均利回りは、この金利より980倍も多いという計算になります。もちろん、株価は常に変動していますし、すでに述べたように企業業績次第では配当金が減らされる可能性もあります。それでも、配当金に魅力を感じる人は少なくないといえそうです。

その証拠に、株式投資を解説する書籍や雑誌、インターネット記事には、「高配当利回り株」「配当利回りが高い株」という言葉が溢れていますし、「高配当株投資」は個人投資家にとって人気の投資方法となっています。高配当株を投資対象とする投資信託も何本かありますし、高配当株に投資するETF(上場投資信託)もあります。

高配当銘柄に注目した指数に連動するETFを紹介する文章には、「配当の高さが株価の下落を緩和させる傾向が見られるなど、一般的に下値抵抗力があるといわれており」などと書かれています。下値抵抗力があると考えられていることも、高配当株が注目されてきた理由の一つといえそうです。

3.高配当利回り株以外の投資方法には、どんなものが考えられる?

新型コロナ感染拡大の影響などで業績が悪化した企業が減配した背景には、「分配可能額」という制約が関係しています。

会社法では、債権者保護のために、会社が剰余金の配当や自己株式の取得などを行うときには、株主に対して交付する金銭などの総額が超えてはいけないラインとして「分配可能額」を定めています。分配可能額についての詳しい説明はここでは省きますが、剰余金を好きなだけ株主に配当として渡してしまったら、いざというときに会社の財産がなく、会社の存在そのものが危うくなる可能性があるでしょう。コロナによる日本経済への影響が不透明な中では、会社が危機的な状況に陥らないようも、配当金の分配額を抑える必要があるといえます。

このことから、高配当株に投資する際には、業績が堅調かどうか、また将来性はどうかなどをしっかりとチェックすることが重要といえるでしょう。

もちろん、こんな環境下にあっても増配を続けている企業もありますから、そのような銘柄に乗り換えることも一つの方法です。ですが、投資方法そのものを見直すことも考えられるかもしれません。

株式投資には、さまざまな方法があります。投資期間に注目する場合、何年も同じ銘柄を保有し続ける「長期投資」もあれば、買った銘柄をその日のうちに売却するデイトレードなどの「短期投資」もあります。

銘柄の選び方に注目する場合、株価の値動きや相場の方向性を、データや経験則から分析する「テクニカル分析」で銘柄を選ぶ方法のほか、企業の財務状況や業績を基に、企業の本質的な価値や、そこから計算した適切な株価と現在の株価を比較・分析する「ファンダメンタル分析」で選ぶ方法が知られています。

企業の売上や利益の成長性が高く、成長性の高さが評価されて株価の上昇が期待できる「グロース株(成長株)投資」もありますし、その企業の企業価値から見て、現時点の株価の水準が安いと考えられる銘柄に投資する「バリュー株(割安株)投資」もあります。

テクニカル分析で売買タイミングを探す場合も、トレンド(株価の方向性)に従った「順張り」と、トレンドに逆らった(=下がったところを買うなど)「逆張り」があります。

では、この中からどれを選ぶのが最適なのでしょうか。それぞれにメリット・デメリットがありますし、その人の性格やリスク許容度に適した方法かどうかという問題もあります。この先も株式投資で収益を上げるためには、「自分に合った投資方法を選ぶ」ことが非常に重要となります。

4.どんな人に、どんな投資方法が合っているの?

前項の「高配当利回り株以外の投資方法には、どんなものが考えられる?」では、高配当株投資以外の投資方法の一例として、

  • 長期投資(中期投資)
  • 短期投資
  • テクニカル分析
  • ファンダメンタル分析
  • グロース株投資
  • バリュー株投資
  • 順張り
  • 逆張り

という方法をご紹介しました。では、いったいどのような人に、どんな投資方法が合うのでしょうか。

自分に合った投資方法を選ぶには、自身の投資目的をはじめ、どのくらいのリターンを得たいのか(期待リターン)、あと何年投資を続けられるのか(年齢)、どのくらいのリスクを負えるのか(リスク許容度)を明確にし、それらの条件に適した方法を選ぶことが大切です。

出所:図表1と同じ

図表3は、日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査 2020年」に掲載されている、各年代における「投資方針」についてのアンケートです。

これを見ると、20代~30代は「概ね長期保有だが、ある程度値上がり益があれば売却する」という見解が55.1%で最も多く、次いで「値上がり益重視であり、短期間に売却する」が18.0%となっています。

これらの数値は、年齢を重ねるごとに下がる傾向にあり、70代では「概ね長期保有だが、ある程度値上がり益があれば売却する」が48.7%、「値上がり益重視であり、短期間に売却する」については13.6%になっています。

逆に、「配当・分配金・利子を重視している(配当等の状況によっては売却する)」は上がっており21.7%です。

若い世代はある程度のリスクを引き受けてでも、値上がり益を重視したいと考えている一方で、70代以上には配当や分配、利子を重視している人が多いという傾向が見えてきそうです。

ここから、万が一、株式投資で失敗しても働いてお金を得ることができる若い世代で、短期間で値上がり益を狙いたい人は、「短期投資」「グロース株」「テクニカル分析」「順張り」などの方法が考えられます。

若い世代でも、大きなリスクを負うことには抵抗がある人の場合、「長期投資」「高配当株狙い」「株主優待狙い」などの方法が良いかもしれません。その場合には、しっかりと「ファンダメンタル分析」を行い、財務状況や業績を随時チェックすることが不可欠です。

株式市場が堅調で、まだ値上がりしていない株を物色する投資家が多いときには、「バリュー株」が注目されます。バリュー株を買うのは株価が上がっていないときですから、「逆張り」の方法が求められるでしょう。

図表3にもあるように、リタイアして年金+αの資産が欲しい人の場合には、高配当株を長期に保有して配当金をもらうことや、株主優待をもらうことを投資目的にすることが多いでしょう。この場合には、「ファンダメンタル分析」を重視し、その企業の本来的な価値に対して株価が安い水準にあるときに仕込みたいもの。「逆バリ」の発送も必要かもしれません。

その人に適した投資方法は、それぞれ異なります。また、株式投資に「絶対」はありません。自分に最適な投資をするためにも、まずは自分自身の目的や考えを振り返ることが大切だといえそうです。

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