こんにちは。株式投資ライターSuiです。

今回は前回の続きで、ユーザベース企業分析の中編「各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する」です。

<全体の流れ>

1. 前編:ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

2. 中編:各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する

3. 後編:直近決算(2020.12期2Q)で進捗を確認

前回の記事で4つのセグメントのうち、SPEEDA事業とNewsPicks事業は黒字で利益を稼いでいる一方、Quartz事業とその他BtoB事業はまだ赤字だが、投資フェーズであることが分かりました。

さて、各セグメントを見るうえでのポイントは①収益構造の理解②業績とKPIの関係性です。

企業によって開示にばらつきはありますが、KPIまで資料や短信で開示している場合は、セグメント情報とKPIの関係性まで考えるとより理解が進みます。

まず黒字事業であるSPEEDA事業、NewsPicks事業を確認し、その後Quartz事業、その他BtoB事業を見ていきます。

(1)SPEEDA事業

SPEEDA事業は、“SPEEDA”という企業情報データベースを企業向け提供するサービスを展開しています。

上場企業から未上場企業の財務データなどを自由に使用することができ、例えば、経営企画部が自社の競合分析をしたり、M&Aの候補を探す時のデータ収集など様々な場面で使用されます。

Bloombergをイメージすると分かりやすいかもしれません。

ライセンス契約でIDが付与されて、月額や年間での料金体系になっているので、サブスクリプション型のビジネスです。

図表1を見ると、SPEEDA事業は利益率(EBITDA/売上)が改善していることがわかります。これは投資フェーズが終わり、コストをかけなくても利益が出せる状態になっていると考えられます。

(図表1)SPEEDA事業 売上・EBITDA推移

次にKPIを見ていきます。

ユーザベースはこの決算でセグメントごとに設定されていたKPIをMRRに統一しています。

おそらく、SPEEDA事業もNewsPicks事業もサブスクリプション型になっているため、統一した方が投資家にとっても分かりやすいのもあり、MRRに変更したのだと思います。

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは1カ月あたりのリカーリング(継続的)収益です。簡単にいえばMRR=サブスク部分の1カ月売上です。MRRのYoYを見ると、売上と同じくらいの成長率になっています。

また、MRRの期中平均に12(ヵ月)をかけて年間のリカーリング収益(ARR)を計算しSPEEDA事業の売上と比較するとほぼ全てがリカーリング収益になっているため、解約がほとんどないといえるでしょう。

したがって、解約率が低い状態でMRRが伸びれば、その分だけSPEEDA事業の売上も伸びる可能性が高いと考えることができます。今後もMRRの成長率には要注目です。(次回の後編では最新決算でこのKPIも確認していきます)

(2)NewsPicks事業

NewsPicks事業は、“NewsPicks”という経済メディアを運営しており、収益源は①広告売上、②有料会員からの売上、③その他売上から構成されています。

残念ながら①~③のそれぞれの売上については説明会資料に数字の開示がありません。

説明会の動画や質疑応答で数字が出ているかもしれませんが、どうしても分析で必要な場合には、IR担当の方へ直接問い合わせしてもいいかもしれません。

(図表2)2019年12月期決算資料 NewsPicks事業ハイライト(売上高の推移)

この部分で少し気になるのは、広告売上の部分です。

新型コロナウイルスの影響で単価や出稿が減少した場合は、広告売上が減少するため、NewsPicks事業の売上減少リスクになります。

グラフからの推測で4割近くは広告売上なので、新型コロナウィルスの影響が出ていないか今後も注意が必要です。

また、SPEEDA事業と同じく、NewsPicks事業でもKPIがMRRに変更されています。先ほど同様に各数字を整理してみたのが下の図です。

MRRからARRを計算すると約18億円になり、セグメント売上41.9億円のうち43.1%(サブスク比率)となります。

MRRに該当するのは有料会員からの売上で、広告売上もあるためSPEEDA事業と比べてサブスク比率は低くなります。

(図表3)SPEEDA事業 売上・EBITDA推移

広告売上の部分は気になる点がありますが、MRRがしっかり増加すれば利益率の改善も期待できると思います。

2019年12月期で利益率が低下している要因も少し気になりますね。

また、広告と有料メディアのビジネスモデルなので、将来的な利益率の水準はもっと高いはずなので、投資も多少しているのかなと思います。

(3)Quartz事業

Quartz事業では、“Quartz”という海外版NewsPicksのような経済メディアを運営しています。

投資フェーズであるQuartz事業ですが、今回は大きな変化がありました。業績を見ると一目瞭然ですが、減収減益となっています。

この大きな原因は「有料課金事業の立ち上げ」です。

(図表4)Quartz事業 売上・EBITDA推移

今までは広告売上だけだったものが、NewsPicksと同様に会員制で有料課金の売上が追加されることになります。

減収については図表5のスライドにある通り、広告売上の減少ですが、減益についてはおそらくこの有料課金事業を開始したことによるコスト増加(図表6のスライドでは新規会員は1年目40%オフ)も影響していると思われます。

(図表5)2019年12月期決算資料 Quartz事業ハイライト(売上高の推移)
(図表6)2019年12月期決算資料 Quartz事業ハイライト(MRRの推移)

広告売上に関しては、NewsPicks事業と同様に新型コロナの影響が今後は少し注意が必要かもしれません。一方で、それをカバーするように有料会員が増えてくれば、有料課金の売上が伸びてくるのでMRRの増加にも注目です。

ちなみに(図表4)のサブスク比率に関しては、まだ有料課金売上を始めたこともあり、かなり低い水準となっています。

(4)その他BtoB事業

その他BtoB事業に関しては、“FORCAS”というマーケティング関連のサービスが牽引して売上が伸びていますが、まだ売上の規模としては9億円弱(全体の7%)と小さいため、ここでは省略したいと思います。

ただ、今後Quartz事業に続く将来の成長ドライバーになる部分ではあるので、今後も売上の伸びには注目していきたいと思います。

まとめ

以上4つのセグメントを見てきましたが、基本的には

1. 広告売上(NewsPicks事業とQuartz事業の一部)

2. サブスク型の有料課金(SPEEDA事業全て、事業とQuartz事業の一部)

によって売上が決まる収益構造になっています。

有料課金の部分については各セグメントのMRRが成長しているかが重要になってくるので、決算でのKPIのチェックが必要です。

中編では各セグメントを細かく見てきましたが、後編となる次回ではこれらの分析を踏まえて、最新決算である2020年12月期2Q決算(記事作成時点)を見ていきたいと思います。


ALTalkに登録して各銘柄のオルタナティブデータを見る

→ https://altalk.ai/