総務省が3月19日に発表した2月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.4%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.4%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同+0.2%となりました。

今後の物価推移は政策によって左右される

「総合」は5か月連続、「生鮮食品を除く総合」は7か月連続で前年同月比マイナスとなりましたが、ともに2カ月連続でマイナス幅を縮めています。また、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は2か月連続でプラスの伸びとなりました。

「総合」と「生鮮食品を除く総合」がマイナスの伸びとなっているものの、マイナス幅を縮めている要因を調べるために内訳をみていくと、エネルギー価格が前年同月比-7.2%と依然としてマイナスではあるものの、前月からマイナス幅を0.9%縮めているというところが影響していそうです。エネルギー価格を構成する電気代、都市ガス代、石油製品など全ての品目も同様に前月比ではプラスとなっています。原油相場が昨年春の急落から反転したことが時差をもって現れました。

今後の物価推移を予想する際に、カギとなるのは政策による物価への影響でしょう。今回発表された消費者物価指数において、「宿泊料」は前年同月比-5.1%と前月からマイナス幅を縮めました。感染拡大に伴い、Go To トラベルキャンペーンが一時的に全面停止されたことから、前年同月比で大きくマイナスとなった宿泊料は下げ幅を縮める傾向にありましたが、外出自粛の影響で自然に下落傾向となったのです。21日に1都3県での緊急事態宣言が明けたことから、今後は同キャンペーンの再開について注目が集まりますが、再開となれば物価の下押し圧力になります。

また、通信大手3社による携帯料金の値下げが実施されますが、これも携帯の通信料という品目で物価には影響があります。2割程度下がれば、物価全体にも0.4%前後の下押し圧力になるでしょう。今後はこのような政策による下押し圧力と、前述のエネルギー価格の上昇圧力のバランスを見極める必要があるでしょう。

物価の内訳から家計の行動変容が分かる

 さらに内訳を見ていくと、ゆでうどんやカップ麺といった手軽に自炊をする際の味方である食材の価格に1つの傾向が見られます。外出自粛や飲食店の時短営業などがあった昨年の春先は価格が伸びている一方で、昨年後半はマイナスの伸びが続いています。

 昨年10月以降は、前年の消費増税の反動もあるという事実は念頭に置く必要がありますが、この動きから分かるのは、これまで夕飯を外食で済ませてきた層が、急に自炊をすることになってしまったことで、お手軽な食材への需要が高まったため、特に値下げをしなくても売れるようになったということです。ナウキャスト社が発表している日次の品目別物価指数の推移を見てみても同じ傾向があります。

 コロナ禍が長引く中で、新しい生活様式が定着し、自炊が習慣化されたことや、自炊・外食の代わりにテイクアウトやデリバリーをするようになったということも一因といえます。

テイクアウト、デリバリーという新しい戦場

 外出自粛に伴い、外食産業にはとても厳しい逆風が吹いたと思われがちです。事実、居酒屋チェーンを運営する鳥貴族の2021年7月期第2四半期の決算は、売上高が前期比-37.8%と大きく減少しています。ファミレス大手のサイゼリヤも2020年8月期の通期決算で売上高が前期比-19.0%とコロナ禍における経営に苦しんでいます。

 しかし、同じ外食産業であっても、マクドナルドは2020年12月期の通期決算で既存店の売上高が前年比+6.8%、1店舗当たりの平均月商も約1,600万円で上場来最高という好業績を発表しています。

 この1つの差として挙げられるのが、アプリから注文して店内での待ち時間など、不特定多数の第三者との接触を避けられる環境を整備したテイクアウトや、マックデリバリーという自社の配送網を持っていたり、UberEatsといった外部のデリバリーサービスの存在が挙げられるでしょう。

 外食産業の場合、原材料費、人件費、賃料という3つの大きなコストがありますが、テイクアウトの場合は人件費が下げられ、かつテイクアウト専門店の場合は賃料も下げられるということで、マクドナルド以外にも各社が注力し始めています。また、客単価×回転率という外食産業の売上構成を考えても、テイクアウトは理にかなっているのです。

家庭で再現できない体験を提供できるか?

 外食産業という観点から、もう少し消費者物価指数の内訳を見てみましょう。すしや焼肉といった外食の価格は2019年10月の消費増税の反動が出る2020年10月以降も前年同月比でプラスの伸びを続けています。

 ここから言えることは、家庭では再現できない体験を提供できている外食産業は依然として需要が高まっているということです。たとえば、家庭で手巻き寿司をすることは出来ますし、焼肉もスーパーで肉を買ってくればできます。

 しかし、例えば回転すしのように、違うネタを1品ずつ10皿食べるというようなことは家庭だと難しいですし、焼肉もあれだけの部位を少しずつ楽しむというのは難しいでしょう。実際、スシローの2020年9月期の決算を見ると売上高は前年比+2.9%と増収を記録しています。

 今後はテイクアウトやデリバリー、そして店内における徹底的な衛生管理なども一層求められると思いますが、それ以外にもコロナ前から求められていたはずの家庭では再現できない体験を提供できているか、という点も企業を評価する際に重要な視点となってきそうです。