足元では新規感染者数の下げ止まりが懸念されているものの、ようやく1都3県における緊急事態宣言も解除され、国内では早くも一部で2回目のワクチン接種が行われるなど、私たちの日常生活が少しずつ正常化していくのではないかという期待の声も耳にします。正常化に伴い、コロナ禍で変容した消費行動が再び変化していくかもしれませんが、今回はオルタナティブデータを活用してコロナ禍における行動変容を確認していきましょう。

コロナによって大きく変化した消費行動

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける消費指数をマクロの観点から19業種に分けたうえで、2021年2月の前年同月比の伸び率を「コロナ禍の1年による変化」、その前の3年間の年間平均変化率を「コロナ前の平均成長率」としてマッピングしたものが下のグラフになります。

 横軸がコロナ前の変化率、縦軸がコロナ禍での変化率を表しています。コロナが逆風となった業種が「旅行」、「外食」、「交通」などの外出が伴う消費活動なのに対して、追い風となった業種は外出を伴わない「EC」と「コンテンツ配信」という点が、いかにもコロナ禍における消費行動の変容をきれいに反映した結果といえるでしょう。

コロナに押し上げられた代表的な2業種

 これまでの連載の中でも、ECとコンテンツ配信がコロナという追い風によって、この1年間で大きく伸びた業種だということは何度も指摘していましたが、2020年1月からの推移を見てみると、改めてこの2業種が力強い伸びを維持していることが分かります。

 上図をみれば、特にコンテンツ配信の伸びは顕著であり、1年を通じて毎月40%前後の伸びを維持しているわけですから、いかに多くの人達が外出自粛の代わりに家で過ごす「おうち時間」において、動画鑑賞をして過ごしたかが容易に想像できます。

 動画配信サービス最大手のネットフリックスの会員数が昨年末時点で2億人を突破し、ウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニー+」の会員数がサービス開始からわずか16カ月で1億人を突破したという事実からも分かる通り、この傾向は日本に限らず世界中で確認できます。

最も追い風を受けたのはECだった

 コロナ禍の1年のデータを見てみると、ECよりもコンテンツ配信がコロナの恩恵を受けたように見えてしまいますが、先程のマッピングデータをコロナ前の平均成長率とコロナ禍の1年間の変化率の差分というかたちで計算しなおし、両社の差分の上位、下位それぞれの5業種をまとめたものが下表になります。

 上位5業種を見てみると、なんとコンテンツ配信が含まれておらず、むしろ5業種中4業種がECに関連していることが分かります。これが何を意味しているか分かりますか?実はコンテンツ配信はコロナ前から高い成長を維持し続けており、コロナが追い風になった部分はあれど、コロナがなかったとしても高い成長を続けていた可能性があり、一方でECについてはコロナが明確に追い風になったということなのです。

新しい生活様式への対応

 冒頭で述べたように、今後はワクチン接種がどんどん広がっていくでしょうし、その間に集団免疫が確立されたり、特効薬が開発されるなど、よりコロナ前の日常へと正常化が進んでいくことが期待されます。しかし、完全にコロナ前の状態に戻るかというと、その可能性はかなり低いのではないかと思われます。これまで食わず嫌いでECやコンテンツ配信を利用してこなかった人たちが、コロナをきっかけに利用するようになり、その利便性を体験してしまった以上、継続して利用していく人は相当数いるでしょうし、実際に外食大手のサイゼリヤはコロナ収束後も午後10時以降の営業を取りやめる方針を発表しました。

 飲食業界でもこれまでのように店舗を拡大するよりは、デリバリーやテイクアウトの比率を高める一方で、実店舗では無人会計やオペレーションの効率化を図ることで、人員削減を図っている企業も多く、どの業界も新しい生活様式にあわせていこうという動きが確認されています。

 このリアルからオンラインという行動変容だけを見ると、それならEC関連の銘柄に投資をすればいいのか?と思うかもしれませんが、実はこの変化による影響が及ぶ範囲はもっと広いのです。これまでは消費をするのは実店舗がメインでしたから、実店舗に人を呼び込むために様々な広告の施策が打たれていましたが、消費をする場がECというオンライン上に変化するのであれば、広告もネット広告がメインになります。

 電通が発表した「2020年 日本の広告費」によれば、テレビ広告は4年連続のマイナス成長となり、かつ2020年はコロナの影響で2桁マイナスとなっていますが、ネット広告は96年の推定開始以来、一貫して成長を続けており、2020年もコロナの影響で伸び率が1桁台になったものの、成長し続けています。この背景にはECプラットフォームの広告費が大幅に増加したことがあります。つまり、消費をする場がリアルからオンラインに変化することで、販促のための広告もオンラインに投下されていくため、ネット広告関連の銘柄にも増収増益期待が生まれます。

 さらにいえば、これまでオンラインマーケティングの際に常用されていたクッキーの利用制限が今後は厳しくなります。アップルは既にiPhoneなどで標準的に使用されているブラウザの「サファリ」でサードパーティークッキーの使用をいち早く制限しており、グーグルも2022年までに自社ブラウザの「クローム」でサードパーティークッキーへの対応を止めることを決めています。このことを考慮すると、単純にネット広告関連の銘柄だけでなく、クッキーレス社会に対応できるアドテク企業や、自然言語処理が可能なAI企業などにも投資妙味が生まれるのです。