「メドレー」が、不祥事で揺れました。上場企業で不祥事が発生すると、株主たちのパニック売りによって暴落することがあります。ですが、メドレーの場合には、翌日の株価は終日揉み合いながらも回復基調で終わり、大きな打撃までには至りませんでした。不祥事の内容にもよりますが、企業の誠意ある対応によっては信頼とともに株価が回復することも少なくありません。盤石な経営力により、株価にほとんど影響を与えないこともあります。今回は「メドレー」の騒動をもとに、不祥事が発生した際の株主(投資家)としての心構えについて考えます。

目次

  1. 突然降って湧いた「メドレー」代表取締役の退任劇
  2. 「メドレー」の対応と株価の動き
  3. 国内外で発生した企業の不祥事事例とその後の株価
  4. 「メドレー」の未来は?

1. 突然降って湧いた「メドレー」代表取締役の退任劇

2021年2月3日の取引終了後、オンライン診療システムを手掛けるメドレーが、代表取締役(代表取締役医師)の豊田剛一郎氏の辞任を発表しました。同日の「文春オンライン」による不倫報道を受け、豊田氏からの「代表を辞任した上で信頼回復に努めたい」という旨の申し出を受け、取締役会で受理されたそうです。

メドレーは2009年6月に設立され、医療ヘルスケア領域に特化したインターネット企業です。医療介護分野における日本最大級の求人サイト「ジョブメドレー」などの人材プラットフォーム事業と、日本最大級のオンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」や、患者のための医療情報サービス「MEDLEY」、条件に合った老人ホーム・介護施設の検索サービス「介護のほんね」などの医療プラットフォーム事業を展開しています。

中でもオンライン診療システムについては、時限的・特例的とはいえ、新型コロナウイルス感染拡大によって2020年4月に初診患者のオンライン診療が解禁されるなど、「IT×医療」への需要が伸びることが期待されています。

事実、2021年2月12日に発表された2020年12月期決算によれば、売上高は前年比43.3%増の68億3,000万円、本業での儲けである営業利益は158.6%増の3億9,600万円、当期純利益は4億5,500万円と黒字化するなど、業績は順調に推移しています。

2.「メドレー」の対応と株価の動き

メドレーでは、スキャンダル報道を受けて即日取締役会を開催し、豊田氏が代表を退任するとともに、2021年12月期に発生する役員報酬を返上した上で、取締役として無報酬で勤務することを発表しました。さらに、税制適格ストックオプション(新株予約権)の未行使分(320,000株分、発行済株式総数比率1.03%)を放棄する旨の申し入れを受けたことを報告しました。

2月3日の報道を受け、4日の株価は一時的に、前日終値から4%下げる場面もありました。しかし、即日取締役会を開催したことで、豊田氏が代表を退任するなどの信頼回復に向けた素早い対応を行ったこともあり、株価は回復基調で終わっています。

3. 国内外で発生した企業の不祥事事例とその後の株価

投資家としては残念なことですが、上場企業の不祥事は少なくありません。今回のメドレーのように社長個人のスキャンダルをはじめ、データの改ざん、粉飾決算、個人情報の漏洩、談合など、不祥事の内容もさまざまです。

●レオパレス21-施工不良発覚

例えば、2018年初めに違法建築疑惑が持ち上がり、その後、会社が施工不良を認めたレオパレス21の場合、会社が約束していた補修工事が進まないことに加え、施工不良発覚以前からオーナーの不満が出ていたサブリース(一括借り上げ)の家賃減額を巡る問題などもあり、2019年3月期に当期純利益が赤字に転落。施工不良の発覚前には1,000円近くあった株価も、2021年2月18日終値は131円と下落したままの状態です。

●第一生命ホールディングス-職員の金銭詐取事案

2020年12月22日に、新たに3人の職員が金銭詐取事案を起こしていたことを確認したと発表した第一生命ホールディングスは、企業としての管理体制に問題があったとの見方から、株価が下落。会見の翌日には、一時株価が3.4%下げる場面もありました。

ですが、相場全体の環境が良好なことに加え、同社が2月5日にイギリスの運用会社ジャナス・ヘンダーソンとの資本関係を解消し、全保有株を売却することを発表したことなどもあって、株価は上昇しています。なお、金銭詐取事案の被害総額は20億7,000万円に上り、今年2月12日には役員が報酬を一部返上することなどを発表しています。

●コムスン(グッドウィル・グループ コムスンは非上場)-介護報酬の不正請求

不祥事が原因で会社が消滅する例もあります。

在宅介護サービスを展開していたコムスンの場合、2007年4月に介護報酬の不正請求の疑いで東京都から業務改善勧告を受けたものの、それに先んじて事業所の廃業届を提出することで処分を免れようとしました。これを重く見た厚生労働省は、同社に対し、事業者指定の新規受付と更新停止という事実上の退場処分を決定。

事業継続が難しくなったため、グッドウィル・グループの関連会社だったコムスンは、同グループの子会社への事業譲渡を発表しました。しかし世間の批判が強まり、グッドウィル・グループは、同年7月にコムスンとコムスングループの介護関連事業を全て売却。コムスンは2009年末に解散し、2011年に完全消滅しています。

●アマゾン・ドット・コム-CEOの女性問題

海外では、2019年にアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の不倫報道が記憶に新しいところです。しかし、アマゾンの業績は好調で、不祥事にも株価はびくともしませんでした。

企業の不祥事は、その内容によっては上場廃止や会社自体が消滅してしまう場合もあります。しかしながら、発覚時の経営陣の対応や経営状況次第で、いったんは株価が下がっても回復するケースも少なくありません。そのため、業績が堅調な企業の場合には、「チャンス」とばかりに底値を狙う投資家も少なくないようです。

4. 「メドレー」の未来は?

では、メドレーの場合はどうでしょうか。

同社では、2月5日以降も株価に大きな変調はありませんでした。

ただし、2月12日の決算発表で、2021年12月期の連結当期純利益が前期比10%増の4億7,000万円~98%減の1,000万円になる予想を発表すると、週明けの2月15日には一時、前週末比で6.8%安い4,555円まで株価を下げる場面もありました。

この減益予想について、同社では「売上高成長の再加速と、今後の事業規模の拡大を見据えた投資を計画」と説明しています。

同社のキャッシュフロー計算書を見ても、その説明通り、成長期にある企業らしく積極的に投資を続けていることが分かります。

加えて、同社は現預金が負債を大きく上回るなど、財務基盤が盤石です。

また、代表取締役医師という肩書きで活躍してきた豊田氏は、医師かつITベンチャーの経営者として、患者が感じる不便さと医療関係者の疲弊を解消するべく、医療現場にテクノロジーの恩恵をもたらす取り組みを続けてきました。その一つがオンライン診療です。

今回の不祥事では、オンライン診療の規制緩和に向けて広報活動に力を入れてきた豊田氏が辞任することで、規制緩和を巡る動きが停滞するのを心配する声もありました。

ですが、豊田氏は取締役として残留することに加え、同社の財務基盤も盤石であること、また成長に向けて積極的な投資を行う姿勢などから、今後の巻き返しに期待したいところです。

もちろん、不祥事にはいろいろなケースがありますし、前述のコムスンのように会社が消滅する場合もあります。不祥事が発生したからといって、その会社の株を慌てて投げ売りしたりせず、ひとまずは冷静に状況を見極めた上で、保有し続けるかどうかを判断した方がいいかもしれません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。