コロナ禍によって大打撃を受けた飲食業界と旅行業界。今回は、その中でも「予約サイト」をターゲットに、実際どのようなダメージを受けたのか、2月の決算発表から読み解きます。また決算発表報告書をもとに、今後の予測や注目の銘柄についても解説・紹介していきます。

目次

  1. 飲食系と旅行系「予約サイト」の決算内容
  2. 今後注目しておきたい「飲食・旅行予約サイト」関連銘柄
  3. 飲食関係や旅行関係の「予約サイト」の今後を読む

1.飲食系と旅行系「予約サイト」の決算内容

●飲食系予約サイト

主な飲食系予約サイトのうち、上場企業が運営するものは以下の通りです。

【上場企業が運営する飲食系予約サイト一覧】

この中から、運営母体への売上・利益の寄与が大きく、サービスへの注目度が高い「ぐるなび」と「食べログ」について見ていきましょう。

〈ぐるなび)

ぐるなびは2月4日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、2020年4~12月の累計売上高は120億4,100万円で、前年同期比で48.6%の大幅減少となりました。営業利益は62億5,000万円の損失計上となり、営業赤字に転落しました。

期間別に見ると、売上高は前年同期比で4~6月が77.3%減、7~9月が46.0%減、10~12月が22.7%減と、苦しいながらも徐々にマイナス幅を圧縮していました。

昨年春の緊急事態宣言で大打撃を受けた後、9月のGo To Eatキャンペーン開始を受けて回復基調にありましたが、年明けからの緊急事態宣言が再び業績に影を落としていることは言うまでもありません。

財務を見ると、純損失計上に伴い、期初と第3四半期との比較で自己資本が65億円の減少となっています。資金繰りや事業存続のリスクは当面ありませんが、当期の本決算は要注目です。悪材料出し切りと説得力のある来期の展望が、安値拾いが奏功する展開も視野に入ります。

〈食べログ)

食べログを運営するカカクコムは、2月3日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、食べログ部門の2020年4~12月の累計売上高は135億9,900万円で、前年同期比で31.5%の大幅減少となりました。

期間別に見ると、前年同期比で4~6月が72.5%減、7~9月が30.8%減、10~12月は4.6%増となり、Go To Eatキャンペーンが回復の後押しとなりました。回復フェーズにおいて、売上高も近く、かつ最大のライバルであるぐるなびに差を付けてきた点は注目に値します。

カカクコムとしては、2020年4~12月の累計売上高は377億6,800万円で前年同期比16.5%減、営業利益は134億6,900万円で前年同期比35.5%減となりました。食べログ以外の事業もコロナ禍で売上を落としており、食べログの落ち込みをカバーし切れない展開となりました。

●旅行系予約サイト

主な旅行系予約サイトのうち、上場企業が運営するものは以下の通りです。

【上場企業が運営する旅行系予約サイト一覧】

〈楽天トラベル)

楽天トラベルは、運営母体である楽天の事業セグメントでは「国内EC」に分類されています。コロナ禍で打撃を受けたトラベルと、コロナ禍が追い風となった楽天市場が同一セグメントであり、楽天トラベルが単体でどの程度売上高・営業利益に影響しているかは、決算説明会資料等の公開資料からうかがい知ることはできません。

参考までに、国内ECの売上高は1,785億2,800万円で前年同期比35.1%増となりました。営業利益は209億7,600万円、前年同期比70.3%増を記録し、楽天市場の寄与が大きいことがうかがえます。

〈エアトリ)

エアトリは、航空券・新幹線の予約に強い総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営する東証1部上場企業です。2月12日に2021年9月期第1四半期決算を発表しました。

決算説明資料によると、2020年9月期第3・4四半期と2021年9月期第1四半期の累計(2020年4~12月)売上高が143億5,800万円で、前年同期比33.7%減となりました。営業利益は4億600万円の損失となり、営業赤字に転落です。

期間別に見ると、売上高は前年同期比で4~6月は30.4%減、7~9月は51.3%減、10~12月は17.8%減と、やはりコロナ禍に打ちのめされる展開でした。しかし投資事業やヘルスケア事業など、業務の多角化を図りつつGo To トラベルキャンペーンの恩恵を受け、10~12月は前年同期比で売上高は落としながらも営業利益は前年同期比超えを達成しています。苦境をバネに急ピッチで改革を進める注目企業です。

***まとめ***

飲食・旅行それぞれの予約サイト運営企業の決算には、コロナ禍がこの業界に与えた痛手の巨大さがまざまざと表れていました。しかし一方で、米国・英国・ロシア・中国などで開発されたワクチンの接種が世界各国で進み、日本でも米国産ワクチンの接種が2月17日に開始されています。首都圏・近畿などの都市部では、高齢・壮年者(55歳以上)を対象に年内にも接種を完了できるという予測も報道されており、早ければ来年春の集団免疫形成が見えてきています。

こうした状況を踏まえ、脱コロナ禍に向けて進んでいく今年、そして来年の収束を見据えて、注目すべき企業を飲食・旅行それぞれ1社ずつ深掘りしていきます。

2.今後注目しておきたい「飲食・旅行予約サイト」関連銘柄

〈カカクコム(食べログ)〉

飲食系予約サイトの二強を形成する食べログとぐるなびでは、昨年春の緊急事態宣言以降の「傷の深さ」に明らかな差が表れていました。

2020年・売上高増減の推移、前年同期比は下表のとおりです。

春から冬へと季節が進む間に、両サービスのレジリエンスの差は開く一方でした。この点については、「週刊東洋経済Plus」《データ比較でわかるグルメサイト大手の実力 コロナ禍で明暗分かれた「食べログ」と「ぐるなび」》が昨年末に詳細かつ妥当な比較検討を行っています。

この記事を要約すると、

  • コロナ禍以前から成長軌道にあった食べログ、下降線をたどっていたぐるなび
  • 集客力に優れる食べログ、飲食店寄りのぐるなび
  • 営業利益率が極めて高い食べログ(カカクコム)、サポート人員を抱えてコスト高のぐるなび

以上のような違いがあるとしています。

ユーザー見ると、食べログは「グルメエッセイ」的であり、ぐるなびは「チラシ」に近いという違いがあります。

食べログの圧倒的な口コミのボリュームは、例えば「3週間先の初デートでは、どこで食事をしようか」と考える若い男性に、3週間のうちに幾度となく食べログアプリを起動させるほどのコンテンツ力を持っています。

また、口コミを集めやすい「コスパ」「おしゃれ」「新しい」といった特徴を持つ店は個人経営が多く、都市部に多いという特徴あります。

これに対し、忘年会や地域・趣味の会合などを取り仕切る幹事が店選びをする際には、ぐるなびが役に立ちます。個人経営店が醸し出すニュアンスや、一つ一つの料理のこぎれいさを伝える写真は、この際不要です。

たくさんのチラシを比較する幹事にとっては、店舗側が幹事に伝えたい情報を手際よく見て取れるページ設計の方が都合よく、出席者にとっても地図を見る際に一瞥する程度なので過不足ありません。中小~大規模のチェーン店のほか、郊外にもぐるなびの顧客が幅広く存在しています。

「グルメエッセイ」と「チラシ」。特徴の違いが、コロナ禍で両者の業績に影響を及ぼした可能性があると考えられます。

昨年春の緊急事態宣言中はもちろん、解除後でも多くの職場・地域・趣味の集まりなどにおける食事会・飲み会に関しては自粛が続いています。このことは両者のどちらに、よりマイナスに働くでしょうか。我慢を強いられる生活の中で、たまに親友や恋人・家族と一緒に行く外食では、どんなお店に行きたくなるでしょうか。どんな気持ちで、どのように探すでしょうか。

カカクコムの最新の決算説明資料を確認すると、食べログ有料プラン契約店舗数は2020年12月の5.99万店から2021年1月の5.88万店と、1.8%の微減にとどまっています。食べログは契約店舗のサービス休会(料金が発生しない)を受け付けていますが、顧客ロイヤリティーの高さが見て取れます。

顧客の経営サポート強化にかじを切るぐるなびと、スマホサイトやアプリの充実といった集客を強化する食べログは、コロナ禍で明確にすみ分けていくことになりました。感染制御・収束で発生する個人の食欲・交際の大復活をこれまで以上に独占できるであろう食べログ(カカクコム)の業績は、今後も要注目です。

ALTalkで食べログ(カカクコム)のアプリダウンロード数を長期で見ると、昨年春のコロナ禍以降、Go To Eatキャンペーン開始時の急上昇を除いて低調にあることが見て取れます。1~3カ月程度の短期で上昇基調が確認できれば、業績浮上のシグナルとなるかもしれません。

(ALTalk「カカクコム」の指標より)

〈エアトリ〉

エアトリの最新決算説明資料(2021年9月期第1四半期)と1年前のそれを見比べてみると、経営の力点が様変わりしています。

最新資料では、冒頭から成長戦略「エアトリ2021“リ・スタート”」をうたい上げ、6つの事業ドメインの連携を「エアトリ経済圏」という用語でアピールしています。1年前の資料では、これらは影も形もありませんでした。

この間、エアトリは新たに「ヘルスケア事業」という事業ドメインを立ち上げてPCR検査に参入。クリニックと提携し、国内検査希望者の予約代行と、海外渡航者向けの陰性証明書発行を開始しました。投資事業の規模も前年度比で19%増加させ、急ピッチで多角化を進め収益減を埋めようとしています。

その結果、セグメント業績を見ると、4つの事業ドメインを含む「オンライン旅行事業」の売上高は前年同期比21.13%減、「ITオフショア開発事業」は15.98%減となったところ、「投資事業」は315.49%増と急速に成長しています。オンライン旅行事業売上減の中でもセグメント利益は倍増させており、リストラの効果が表れています。

コロナ禍において、事業の再構築と体質強化をなりふり構わず進めるエアトリは、感染制御・収束後に業績を急回復させ、さらなる高みをうかがうための組織づくりをぬかりなく行っているといえるでしょう。中国をはじめとするグローバルビジネスの急回復も追い風となるはずです。

エアトリのアプリダウンロード数も、昨年春のコロナ禍以降の低調から脱出できていません。慎重を期したい投資家は、1~3カ月程度の短期で上昇基調を確認してからのポジション取りが無難かもしれません。

(ALTalk指標「エアトリ」より)

3.飲食関係や旅行関係の「予約サイト」の今後を読む

今冬の緊急事態宣言は、2カ月に及ます。冬場に強くなったウイルスの勢いが次第に衰えて、昨年同様の経過をたどるなら、Go To キャンペーンが再開され、当業界にとって晩秋までは再び穏やかな回復フェーズとなることが予想されます。

来年まで時間軸を伸ばせば、ワクチン接種による集団免疫形成後のペントアップ需要は、非常に大きいものとなるでしょう。大きな収穫を得るために、曇り空の1年にダイエットと筋トレを着実に行っている企業であるかどうかを、投資家は見極めていく必要があります。

以上をメインシナリオと考えていますが、続いてリスクファクターを点検していきます。

1. ワクチン接種の進捗

日本におけるワクチン接種希望者は6割程度という調査があり、これは他国に比べてです。希望者が7割を超え、接種が進んでいる米国でも、集団免疫獲得は秋以降と見込まれています。日本の集団免疫形成は次の冬には間に合わないでしょう。医療機関の疲弊が進んでいることもあり、年内にもう一度、緊急事態宣言があるかどうかが当業界にとって最大の業績リスクとなります。

2. 政治的リスク

昨夏~冬にかけてのGo Toキャンペーンが、飲食・旅行予約サイトのつかの間の回復に一役買ったことは明らかです。しかしGo Toは、関連業界の好意的な受け止めをよそに、世論の受け止めは決して良くありません。旅行や外食に行ける高所得者だけを対象とした優遇策であるばかりでなく、ウイルスを蔓延させた元凶との批判もあります。

報道で伝わるところでは、このキャンペーンは自民党・官邸実力者の肝いりで強力に推進された政策といわれています。その政権発足からわずか5カ月で、内閣支持率は危険水域(アンダー30%)に近づいています。政変が起こって看板が変わり、後ろ盾がようなことがあれば、キャンペーンの再開も疑わしくなります。政権の動静には十分に注意を払っておくべきでしょう。

3. 東京2020オリンピック競技大会

東京2020オリンピック競技大会の開催は極めて流動的になっています。

当業界にとっての最良のシナリオは、検疫によって海外からの観光客を事実上シャットアウトし、国内からの観客を入れて行われるケースです。この場合、飲食・旅行予約サイトともに恩恵が及びます。

感染鎮静化の失敗によるオリンピックの中止は、いまや想定内といえそうです。ただし医療機関が対応できる程度のコロナ再燃であれば、当業界も穏当な業績回復が進むでしょう。

最悪のケースは、無観客での開催です。オリンピックムードによる盛り上がりが2週間程度続くとすれば、飲食予約サイトは利用者増が想定されます。しかし、それによって市中感染が再燃となれば、またしても緊急事態宣言が発令されるという展開もあり得ます。また旅行予約サイトにとっては、無観客でのオリンピック開催では利得がなく、感染拡大のリスクのみ大きくなる展開も考えられます。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。