総務省が2月19日に発表した1月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.6%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.6%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同+0.1%となりました。

各品目の物価がコロナの影響を受け変動している

「総合」は4か月連続、「生鮮食品を除く総合」は6か月連続で前年同月比マイナスとなりましたが、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は3か月ぶりにプラス圏に浮上しました。上図を見れば明らかですが、1月の消費者物価指数は1年以上続いていた物価の下落トレンドから反転に生じています。

その要因の1つに「宿泊料」が挙げられます。「Go To トラベル」が一時的に全面停止されたことにより、宿泊料は前月の前年同月比-33.5%から同-2.1%へと大きくマイナス幅を縮小しました。

また、巣ごもり需要の高まりを背景に電子レンジ、ルームエアコン、空気清浄機などの「家庭用耐久財」は前年同月比3.1%と高い伸びを続けています。「設備・修繕」や「住居」などの項目も上昇しているのも外出自粛や在宅勤務の普及が影響しているのでしょう。

一方で、依然としてエネルギー価格は前年同月比-8.6%と前月の同-8.1%から更にマイナス幅を拡大することになりました。灯油は前年同月比-14.4%と前月から変わらずとなりましたが、ガソリン、電気代、ガス代は全てマイナス幅を広げています。

宿泊料と保険料それぞれの指数への影響は?

 1月の消費者物価指数の品目別価格指数を見ていくと、前述の通り宿泊料が大きく跳ね上がっています。12月の時点で先行して一部地域で「Go To トラベル」が停止された結果、宿泊料の下げ幅が少しだけ縮小していたことから、1月は全面停止で大きくマイナス幅を縮小することは前回の記事「デフレ脱却は当分難しい?オルタナティブデータから浮かび上がる悲観的シナリオ」で指摘した通りです。

 一方で、足元では1日あたりの陽性者数が大幅に減少しはじめ、一部では予定よりも早く緊急事態宣言を解除することも検討されているとの報道もあり、「Go To トラベル」が再開されれば改めて宿泊料のマイナス幅は大きくなるため、この項目は新型コロナウイルスの感染拡大の状況に左右されてくる要因となります。

 また、「火災・地震保険料」や「傷害保険料」も上昇に寄与していますが、自然災害が頻発していることから、特に火災・地震保険料は段階的に引き上げられている傾向にあることは覚えておきたい点です。

エネルギー価格と通信料に注目

 今後の物価動向について考えてみると、前述の通り宿泊料がどのタイミングで大きくマイナスになるかという不確定要因もありつつ、それ以外で注目すべきなのは「通信料(携帯電話)」と「エネルギー価格」でしょう。

 携帯電話大手3社が値下げをすることは既に報道されていますが、通信料(携帯電話)は消費者物価指数への寄与度が比較的大きい項目であり、仮に報道にあるように2割程度の値下げとなるのであれば、0.4%前後の押し下げ圧力となるのではないでしょうか。

 一方で、足元では原油価格が13カ月ぶりの高値を記録するなど、上昇傾向にあります。昨年の原油安の裏が発生することから、エネルギー価格が原油相場の価格を反映するタイムラグを考慮しても、これからはエネルギー価格が大きく指数全体を押し下げることはなくなりそうです。

スーパーは特売をしなくなっている?

 さて、1月の消費者物価指数について、全体の動向から細かい品目別の価格動向について見てきましたが、今月はオルタナティブデータを活用して消費者物価指数が下落傾向にあるなかで、スーパーの販売戦略について見てみましょう。

 ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」を用いますが、同データは全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。日次の物価指数であるT指数、t日の前後28日間に最も多かった売価(定価)を示すmode指数の2つを使ってグラフを描画したのが下図です。

 定価を示すmode指数がこの1年間で下落傾向にあるのは、消費者物価指数の動向と整合性が取れています。そして、T指数からmode指数を引いた数値を青い折れ線で表していますが、これが何を意味するかを説明しましょう。この数値がゼロより小さい、つまりマイナスになっている場合は特売が多くなっている可能性が高いと推定できます。

 コロナの感染拡大が本格化したのが昨年の3月頃とすると、その頃からあまり特売しなくなっていることが分かります。その理由を断定することは出来ませんが、コロナ禍においてはスーパーに足を運ぶ人が増え、通常の不況のようにスーパーで買い物をする人が減ったということはないため、そこまで特売をするインセンティブが働かなかった可能性があると考えられます。

 今後も消費者物価指数というマクロな物価動向を注視しつつ、各業種・業態で販売戦略や動向にどのような変化があるのかをオルタナティブデータを活用して確認していきたいと思います。