2月に入り新型コロナウイルスのワクチンの話を耳にする機会も増え、陽性者数もピークアウトしたように見えますが、栃木県を除く10都府県では緊急事態宣言が3月7日まで延長されました。

思い返せばちょうど昨年の2月頃から日本国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大していきましたが、この1年で私たちの行動にはどのような変化が生じたのでしょうか。今回もオルタナティブデータが示す行動変容について確認していきましょう。

コロナ問題発生から1年での変化とは?

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける消費指数を20分野に分けたうえで、昨年1月を「コロナ前」として、2021年の1月のデータと比較することで、この1年間で生じた行動変容を確認しましょう。そのデータをマッピングしたものが下のグラフになります。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 このグラフから読み取れるのは、動画配信などを含む「コンテンツ配信」や「EC」が巣ごもり需要の高まりを受けて大きく伸びただけでなく、飛行機や鉄道による移動の代替手段としてマイカー移動の需要が高まり「自動車小売」や、在宅勤務の普及で家電を含む「機械器具小売」も大きく伸びていることです。

 一方で、やはり感染拡大を防止すべく外出を控える人が増えたり、不特定多数の第三者との接触を回避したいという気持ちが表れたことで、「交通」、「旅行」などは大きく下落し、当然ながら時短営業の影響もあり「サービス総合」も大きく落ち込みました。

「密」のイメージが強い映画館は苦戦

 もう少しミクロな視点で見るために、分野を業種業態で区分けすると、コロナ禍で苦戦を強いられた業種の1つとして「映画館」が挙げられます。

 下図の左側のグラフは映画館の消費指数を年代区分ごとに半年前の8月から月次でグラフにしたものですが、その消費指数を見てみると、全年代で大きく落ち込んでいることが分かります。10月に40歳未満と70歳以上で前年同月比プラスになっているのが確認されますが、これは10月16日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が歴代興行収入新記録を樹立した影響です。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 昨年1月と今年の1月を比較したのが右側のグラフですが、全年代で映画館での消費が大きく下落していることが分かります。傾向としては高齢者の下落幅の方が大きく、新型コロナウイルスの重篤化リスクが高い高齢者が密の環境を避けたとみていいでしょう。

特需を受けたのはコンテンツ配信

 外出をして映像コンテンツを楽しむという選択肢が失われた一方で、動画配信などの「コンテンツ配信」が大きく伸びたことが確認できます。経済とは面白いもので、どこかの業種が落ち込むと、反対に特需の恩恵を受ける業種が出てくるものです。

下図は「コンテンツ配信」の消費指数を月次でグラフ化したものに、陽性者数の推移を重ねたものですが、昨年に緊急事態宣言が発出された4月以降、前年同月比で30%以上の伸びを続けており、足元では40%以上の伸びが続いています。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」、厚生労働省のデータを基に著者作成
(注):網掛け部分は第1波~第3波を表現。

 この傾向は日本に限った話ではなく、たとえば米国の動画配信大手ネットフリックスは世界の有料会員数は2020年末時点で2億人を突破したと発表しています。

 先程の映画館と同様に年代別に区分けをしてグラフ化してみると、80歳以降の伸びが目立ちます。実はECでも同じ傾向が確認されており、これまではなかなかネットサービスを使うというきっかけを作れていなかった高齢者世代がコロナ禍をきっかけにデジタルシフトした様子が確認されます。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 今後、ワクチン接種が一巡し、経口摂取できる薬などが普及した場合、再び一部の消費者は映画館での鑑賞を楽しむとは考えられますが、一度自宅で好きな時間に好きなスタイルで動画を楽しめるというメリットを実感してしまった消費者が全て映画館に戻るとは思えません。

失った市場規模の一部は戻らない

 今月、ネットフリックスは2018年8月に次いで2回目の値上げを行いましたが、コロナ禍で新たに多くのユーザーを獲得した動画配信企業は値上げを含めた強気の戦略をとっていくでしょう。

反対にコロナ禍が逆風となってしまった映画業界はこれまでの常識が大きく転換するかもしれません。新型コロナウイルスが新たに変異したり、または全く違う疫病が流行することは今後も十分にあり得るため、今後はリスクを抑えるべく映画の公開本数が減る一方で、動画配信プラットフォームと連携して、有料会員だけに限定配信されるコンテンツが増えたり、視聴者がただ鑑賞するだけでなく、参加できる双方向型のコンテンツも増えていくことが予想されます。

 そのようなシナリオを考えると、これから拡大していく動画配信市場には関係する企業が多く、単純に動画の権利を持つ企業だけではなく、決済機能や配信プラットフォームを持つ企業、動画を利用した広告配信サービスを提供する企業など、多くの企業が物色対象になっていくと考えられます。