年が明け、海外情勢の動きに加え、アフターコロナの足音もだいぶ近づいてきました。ALTalk執筆陣の一人、個人投資ジャーナリストの日野秀規氏が、2021年の相場観や注目する業界、そしておすすめの銘柄について解説します。

目次

  1. 日野秀規が振り返る2020年のマーケット
  2. 2021年の相場を占う上で注目のイベントとトピック
  3. そして気になる注目の業界と銘柄は?

1.日野秀規が振り返る2020年のマーケット

2020年は、世界中の投資家が新型コロナウイルス感染拡大に影響を受け、振り回された1年でした。

「実体経済への巨大なショック」と、それを打ち消そうとする「政府・中央銀行による史上空前のバックアップ」という極めて特殊なマクロファクターがはたらき、株式市場は通年では上昇となりました。

日本の株式市場では1年を通してグロース株(成長株)の独り勝ちとなり、バリュー株(割安株)や小型株などのセグメントに大差を付けて、市場平均(TOPIX)をも大きく凌駕。グロース株の指標である日経平均のインデックスファンドが年率リターン18.1%を記録したのに対し、TOPIXインデックスファンドは7.3%にとどまりました。

※日経平均・TOPIXインデックスファンドの年率リターンはeMAXIS Slimシリーズの運用成績

この傾向は日本国内に限らず、米国株式や日米を含む先進国株式で広く見られた現象です。詳しくは昨年末に公開されたALTalk記事「グロース株投資vsバリュー株投資、2021年はどちらが笑う?」でまとめましたので、ご一読ください。

新型コロナウイルスによるショックが世界の経済社会に与えている傷は、ワクチン接種の進展とともに今後1~2年をかけて修復されていくでしょう。この間、政府・中央銀行によるバックアップ=巨額のマネーは、経済社会の回復によってお役御免になることもなく、滞留・循環を続けていきます。FRB・ECB・日本銀行のいずれも、2021年内の金融引き締めを想定すらしていません。

滞留が続けばデフレ、循環が早まればバブルです。2021年金融市場の通奏低音は「デフレとバブルの綱引き」ということになりますが、本稿では個人投資家にとってよりリスクの大きいバブルに着目して考えていきましょう。

2021年の相場を占う上で注目のイベントとトピック

①ダボス会議

ダボス会議は「世界経済フォーラム」という非営利団体の年次総会です。スイスのダボスで毎年1月に開催され、世界各国から知識人やジャーナリスト、グローバル企業の経営者や政治指導者といったさまざまな分野のトップリーダーが集結します。世界の経済や環境の持続可能性・紛争や貧困など、世界が直面する重大な問題を議論する場として注目を集めています。

今年は例外的に5月にシンガポールでの開催となり、そのテーマは「グレート・リセット」。経済発展と、社会の公正・持続性・回復力、さらには人間の尊厳を両立する経済・社会システムの構築を目指した「再起動」のイメージです。

ダボス会議はもとより毀誉褒貶(きよほうへん)の多いイベントです。「ダボス貴族の社交場」と揶揄され、“意識高い系エグゼクティブがキメ顔できれいごとを語る場”というイメージを持たれている節がありつつも、参加者の知名度やパワー、メディアの扱いを通じて、現実の経済社会に影響がトリクルダウンしていきます。

金融市場との関わりで特に重要なのが、環境・社会・統治の公正・適切をうたう「ESG」という投資指針です。コロナ禍で世界経済・社会が大きなダメージを負う中、今年のダボス会議では例年にも増して、ESGを後押しする強いメッセージが出る可能性があります。

それを受けて、機関・個人双方の投資で「ダボス・マーケティング」の類が展開され、株式のESG投資やソーシャルボンド・グリーンボンドといった債券投資も含め、現在進行中の「全部バブル」(Everything Bubble)に薪がくべられていく1年になるのではないかと考えています。ESGについては考慮すべき点が多いので、詳細は後述します。

②米国インフレ率・長期金利

上昇を続ける米国BEI(10-Year Break Even Inflation Rate, 今後10年間の予想インフレ率)は2021年1月12日現在、2.08%に達しています。昨年末の日本のBEI 0.024%とは格段の差です。

期待インフレ率の上昇は長期金利の上昇圧力となりやすいため、米国株式についてはグロース株からバリュー株へのローテーションが起こりつつあります。またBEIの予測通りにインフレ率が上昇しつつも長期金利が上がらなければ、実質金利の低下となり、ゴールドやビットコインのさらなる価格上昇も視野に入ってくるでしょう。

米国の長期金利上昇は、それ自体が円安効果を通じて日本株式に影響を与えるとともに、米国景気の回復を連想させ、リスクオンのムードを呼ぶ面もあります。目配りしておいて損はないでしょう。

③「ドットコムバブル」以来の米国株式ブーム

収益と株価の関係に特に敏感なバリュー投資家の間では、もはや米国株式バブルの弾薬はかなり充塡が進んでいるという意見が2019年後半から根強くあり、日を追うごとに強くなっています。

米国では1990年代後半に、インターネット関連の株式が異常な高騰を示した「ドットコムバブル」があり、2000年春~夏にかけて破裂を開始。S&P 500指数は頂点から40%、成長株市場のナスダックは80%の下落となり、日欧の株式市場も連れて大幅安となりました。

コロナ禍を追い風に、テクノロジー株を中心に盛り上がる米国株式の現状は、ドットコムバブルをほうふつとさせる……という意見をよく目にします。「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という格言の通り、過去のバブルと全く同じ展開となることはないと思われますが、過去事例としておさらいしておいて損はありません。

ドットコムバブルがはじけて米国株式市場が下落する間も、米国小型バリュー株は25%に迫る上昇となり、長期債券の上昇率は50%を超えました。分散投資は常に有効です。

米国モーニングスターより、分配金再投資
2000.3.24~2002.9.30
青:S&P 500インデックスファンド 橙:日本株ETF 黄緑:欧州株ETF 黄:米国小型バリュー株ETF えんじ:米長期国債ファンド 深緑:ナスダックETF

近年の大規模バブルが崩壊する背景には、常に利上げがありました。日本の平成バブル・ドットコムバブル・サブプライムバブルも例外ではありません。

またバブル崩壊前には、金融市場に違和感が漂います。ドットコムバブルではナスダックとS&P 500の値動きの乖離があり、サブプライムバブルではBNPパリバによるサブプライム証券ファンドのデフォルト以降、金融機関の破綻が続きました。

米国金融市場の現状は、テスラとビットコインの暴騰・SPAC(特別買収目的会社)の流行と、後になって振り返ればバブルエピソードとされるような出来事がそろってきたように見えます。空前の金融・財政のプッシュを受け、一直線の株価上昇を示しつつ、一向に20を切ってこない米国VIX(ボラティリティ指数)の推移も不気味です。

とはいえ、前述しましたがFRBは2021年内の金融引き締めを想定すらしていません。ギリギリまで踊るにせよ、早めに引き上げるにせよ、戦略を持っておきたいところです。

3.そして気になる注目の業界と銘柄は?

昨年に続き今年も強気にリスクテイクをされたい向きにおすすめしたいテーマが、前述の「ESG」です。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、社会経済の公正や持続可能性に貢献する企業の資金調達を助け、育成する意味合いを含んだ投資指針です。ESGの観点から銘柄を選別する株式ファンドは、大手金融機関や年金基金などの注目を集め資金流入が加速しています。

長期にわたって安定的に資金が入ってくる株式セグメントは、いわば「肥沃な土壌」であり、投資家の選択眼が実を結びやすいフィールドです。ESG投資を標榜している投資信託には、「グローバルESGハイクオリティ成⻑株式ファンド」「ジャパンESGクオリティ200インデックスファンド」などがあり、これらの月次レポートや運用報告書は銘柄選択のヒントになります。

ジャパンESGクオリティ200インデックスには

  • エムスリー(2413)
  • 神戸物産(3038)
  • MonotaRO(3064)
  • ZOZO(3092)
  • オープンハウス(3288)
  • Zホールディングス(4689)
  • リクルートホールディングス(6098)
  • キーエンス(6861)

といった成長・優良銘柄が含まれています。

(参考:https://www.stoxx.com/index-details?symbol=ISMJESGK

ALTalkでカバーしているMonotaRO(3064)を見てみましょう。

(ALTalk 「MonotaRO」参照)

MonotaROのweb訪問数は、ホームセンター運営企業の月次開示などと比較検討することで、より立体的に資材需要や業績の予測に活用できる可能性があります。

Zホールディングス(4689)の場合は、肝いりの「PayPay経済圏」の帰趨を占う「PayPayアプリダウンロード数」を確認できます。

(ALTalk 「Zホールディングス」参照)

ただし、ESG銘柄の要件は公式に決まっているわけではなく、銘柄選択の基準は多分に恣意的です。ESG投資が、比較対象となる市場平均インデックスを上回る(プレミアム)という証拠も不足しています。定義の定まらないコンセプト、超過収益が確かめられていない投資方針が正当性や権威を持ち、そこに資金が雪崩を打って集まる様には、個人的には違和感を禁じ得ません。

そもそも、株式市場が限りある資金を適切に配分するという「神の見えざる手」は、参加者それぞれが勝手に私利私欲を追求した結果として実現されるものです。ESG投資が、例えばアルコールやたばこといった「望ましくない」産業やガバナンス整備途中の成長企業を恣意的に除外するのであれば、長期的にはこうした非ESG企業を割安に拾った投資家に報いるのが株式市場である……という考え方もあり得ます。海外では、このような”Sin Stock”(罪のある株式)の長期運用成績が優れているという研究結果もあります。

株式や債券などの金融市場を通じて、社会経済の公正や持続可能性を実現するというESGのコンセプトは、若干の「うぬぼれ」や「規制逃れ」を感じさせつつも、逆らえない時流の勢いに乗っています。アフターコロナでいよいよ吹き上がる「全部バブル」の掉尾を飾るにふさわしいキーワードといえるでしょう。

ちなみに私個人の投資は、現金・債券・コモディティ・ゴールドがポートフォリオの4割強を占める、コロナバブルの負け組であることを申し添えます。皆さまの爆益をお祈りしております。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

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