コロナ禍においてはITやハイテクに代表されるグロース株投資に軍配が上がりました。しかし今後、ワクチンの開発や景気の回復、金利の上昇を背景に、潮目が変わりそうです。2021年はグロース株投資? それともバリュー株投資? その勝敗を占います。

目次

  1. 2020年の市場総括
  2. 現状の市場について
  3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?
  4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

1. 2020年の市場総括

まず、2020年の国内株式市場を「バリュー」「グロース」「小型」の3スタイルに着目して振り返ってみると、以下のことが見えてきます。

  • 通年ではグロース株が市場平均およびバリュー株を大きく上回った(図1:A)
  • 暴落からのリカバリー~レンジ相場にかけて、グロース株の強さが目立った(図1:B)
  • 秋から冬にかけては実体経済の足踏み予想を反映し、小型株が沈む展開に(図1:C)

【図1】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

●株式市場動乱の2020年上半期

年初から中国の武漢を封鎖に追い込んだ新型コロナウイルスが、すでにアジアのみならず欧米・中東などに伝播していることが明らかとなり、3月25日を境に世界の株式市場は激しく動揺していきます。

約1カ月間続いた暴落期(図2・①)では、投資家の心理は未知の疫病への恐怖に支配されました。通常の景気後退では株価下落のヘッジとなる投資適格債券やゴールドまでそろって急落。日本株式全般が影響を受け、日本株式を代表する株価指数であるTOPIXは26.14%の大暴落となりました。

3月中旬には米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)がそろって大規模な金融緩和を打ち出します。各国政府もビジネスや市民への直接給付など、近年例のない巨額の財政支出を行い、経済を支えました。

3月下旬から株式市場は、実体経済に先駆けて急速な回復を見せ(図2・②)ましたが、ここでバリュー株の不振が始まります。TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の上昇率に7.54ポイントの差が付きました。同時期に好調に推移した日経平均もグロース株指数といえます。

【図2】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

コロナ禍で値を伸ばしたグロース銘柄の代表格がBASE(4477)です。コロナ禍が引き起こした最も顕著な消費形態の変革であるEコマースはまさに当社のフィールドであり、3月23日に付けた896円から10月8日には、15,930円と約18倍の大相場となりました。

緊急事態宣言中の5月から10月にかけて、Web訪問数は約3倍に急伸。積極的な広告宣伝が功を奏し、急速に注目を集めていたことが分かります。

《BASE:株価》

《BASE:web訪問数》

(ALTalk「BASE」指標より)

●レンジ相場とバリュー株復権の下半期

不安と弛緩が同居した夏から秋にかけて株式市場はレンジ相場入り(図2・表③)。金融・不動産・資本財といった実体経済と直結するバリュー株セクターは、緩慢な景気回復とワクチン開発の様子見などが相まって低迷が継続します。TOPIXバリューとTOPIXグロースの上昇率較差は約10ポイントに及びました。

その後、いち早く新型コロナウイルスを制圧した中国の景気回復やワクチン開発の進捗を受け、株式市場は歴史的な上昇の11月を経験しました(図・表④)。小幅ながらバリューがグロースを逆転する一方で、小型株が不振に陥ります。

ワクチン接種による欧米の早期正常化が期待される一方で、日本国内の正常化が2022年までかかるという予想もあり、国内経済を反映する小型株からグローバル企業を含む大型株へ資金のローテーションが起きている可能性があります。

11月には、割安感から外国人投資家が日本株の買い越しに転じており、その資金が小型株には及ばないことも不振の一因として考えられます。

TOPIXは3.53%の小幅上昇となった2020年は、TOPIXグロース・日経平均など大型グロース株が市場平均・バリュー株・小型株に大差を付け、一人勝ちの1年となりました。

2. 現状の市場について

株価の最も基本的な物差しであるPER(株価収益率)を使って、ごく大雑把に考えてみます。

一般的に、株式というリスク資産を保有することで得られる利益(リスクプレミアム)は、4~6%程度が通常の水準です。現状はリスクフリー資産である国債の金利がないので、この4~6%がそのまま株式益回り(1株当たり利益を株価で割ったもの)となります。逆数を取れば、PERが算出できます。

《PERの計算式:100 ÷ 4~6% = 16.7~25倍》 

金利がない状況では、株式投資の一般的なPERは16.7~25倍程度ということになります。
日本では金利のない時期が20年近く続いていますが、本来リスクプレミアムと金利を足したものが株式益回りなので、仮に金利が上昇して1%になれば

《PERの計算式:100 ÷ 5~7% = 14.3~20倍》

PERは14~20倍程度が妥当な水準となるわけです。

この計算を踏まえて、現在の日本株式市場のPERを確認します。

(12月17日現在)

今後の企業収益改善予想を織り込んだ予想PERであり、割高水準といえるでしょう。この水準で買いに入った投資家が報われるには最低限、以下の条件のうち少なくとも一つは満たされる必要があります。

①企業の収益改善が継続・ジャンプアップしていく
②投資家のマインドがさらに高進して株式投資ブームがやってくる
③長期金利がマイナスを掘り進む

頭を冷やして考えると、この水準では買いづらいと思われる向きも少なくないでしょう。とはいえ、これまでの議論は株式市場一般についてであり、いわゆる「長期インデックス投資」に強く関係するものです。

個別企業については常に、さらなる利益成長や株価の上昇トレンド継続が見込める銘柄や、割安放置が是正されそうな銘柄の発掘は、努力次第で可能です。過熱気味であるとはいえ、少なくとも平成バブル末期の日経平均PER 60倍という情勢とは全く異なります。

米国S&P500指数のPERが44倍に達した1990年代末のドットコムバブル期でも、バリュー株は安値に放置されており、バリュー投資家は後に高リターンで報われました。

皆が教科書通りインデックスに行くなら、「裏に道あり花の山」です。

3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?

実体経済の回復による長期金利の上昇や、サプライチェーン再構築によるインフレといったマクロ経済の動向が懸念されています。現実となれば、長く続いたグロース株優位が終わり、テクノロジー企業に代表される超成長株投資に逆風が来ると考える向きも少なくないようです。

私見ですが、これは米国内の論調に引っ張られている面があると思えてなりません。米国経済には、2019年までに政策金利を2.25~2.5%へ上げることができた元来の足腰の強さがありますし、現時点でもまだ長期金利は0.9%のプラスです。

異次元緩和でもインフレ目標を達成できていない日本で、インフレ期待・金利上昇へ導く確かな道筋を示すことができる政府・中央銀行関係者や学者がいればノーベル賞ものです。日本銀行がイールドカーブコントロールで国債市場を制圧してきた点も米国とは事情が異なります。マネーストック増につながる財政支出も迫力不足です。

金利上昇で恩恵を受けるバリュー株の代表といえば銀行株ですが、日本の銀行株指数の動きは惨憺たるものです。米国の銀行と比べても明らかな低評価が定着しており、金利が上がらなければ業績の先行きも多くは望めません。

金利上昇による恩恵を現実的に期待できる銀行セクターと、実体経済の回復が強い追い風となるエネルギーセクターを抱える米国とは構造が異なるため、日本でもバリュー株の復権があり得ると単純に考えるのは難しいといえます。

(2020年12月17日現在)

●とはいえバリュー株は「安過ぎる」のは確か

先進国株式におけるバリュー株はこの10年余りは極度の不振にあり、グロース株とのリターン較差は空前の域に達しています。だからこそ長期投資で「平均回帰」が起きたときの見返りはかつてないものになると、世界の著名バリュー投資家は皆考えています。

米国の著名投資顧問会社GMOを率いるジェレミー・グランサムやスマートベータ投資の立役者ロブ・アーノット、著名ヘッジファンド運用会社AQRキャピタル・マネジメントのクリフ・アスネスなど、枚挙にいとまがありません。日本のバリュー株もまた極度の割安にあることは確かです。

以上を踏まえて、「2021年にグロース株とバリュー株のどちらが有利か」を考えるためのポイントは以下の通りです。

①欧米でワクチンの接種・効力発揮が順調に進むか
②中国経済の腰折れがないか
③国内のデフレ再来懸念

2021年単年であれば、上記のポイントのうち①、②が順調にいくなら一般消費財や素材など景気敏感セクターのバリュー株にチャンスがあるかもしれません。

ワクチン接種が遅れる日本国内では、現在の消費・経済の流れが急変する見込みはありません。投資家の成長株物色トレンドを先回りして仕込みたいところですが、東証マザーズから資金が抜けている現状もあります。判断に迷うところで、投資家個々人の年末年始のホームワークになるでしょう。

10年単位の長期資金であれば、バリュー株投資にうってつけの局面です。金融・公益株を避け、コア事業が明瞭・売上営業利益とも大まかに右肩上がり・高ROE(自己資本利益率)・高自己資本比率の、いわゆる優良株の中から割安な株を仕込んでいくのがよいでしょう。

バリュー株投資はその時点で「見過ごされている」銘柄に投資することが多く、株価が上昇するためには「見つかる」タイミング(カタリスト)を待つ必要があります。最悪の場合は「見つからない」可能性もあるので、複数セクターにまたがる分散投資は必須です。

4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

成長株と一口にいっても、コロナ禍においてはその性質によって株価の挙動に差が見られました。

①「実際の人間の動き」に密着したサービスを提供する企業
  人材系、アパレルなど  例:ZOZO、リクルート

②オンライン上のサービスに特化した企業
  Eコマースなど  例:BASE

③高成長局面にある中で、さらにコロナ禍を追い風とした企業
 メディカルプラットフォーム、DXなど  例:エムスリー

この中では『①』で比較的株価の戻りが鈍い銘柄を見つけることができれば、欧米のワクチン接種進捗とともに国内正常化の期待が盛り上がり、値を切り上げていくというシナリオが考えられます。

ALTalkがオルタナティブデータを提供している銘柄では、ZOZO(3092)、リクルート(6098)あたりにその可能性があるかもしれません。

《ZOZO:株価》

《ZOZOTOWN:web訪問数》

(ALTalk「ZOZO」指標より)

人と人が元通り会えるようになる「生活スタイルの正常化」が連想されれば、ファッション需要はペントアップもあり、急速に回復すると考えられます。コロナ禍で消費者がEコマースチャネルに慣れた意義は大きく、ZOZOにとってはチャンス到来となるでしょう。

《リクルート:株価》

《Indeed:web訪問数》

(ALTalk「リクルート」指標より)

リクルートは人材派遣分野での売り上げが大きいので、ALTalkで見られるオルタナティブデータの中では、Indeedの訪問数が人材流動の動向を考える上で参考となるかもしれません。

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