サイボウズは2020年12月期第3四半期決算において、前年同期比で売上高16.7%増、営業利益25.4%増と注目すべき好業績を発表。グループウェアの老舗ながら高い成長性を投資家にアピールしました。

2021年に控える本決算を見据え、第3四半期決算の内容点検と企業成長に期待が持てる「3つのポイント」をご紹介します。「グループウェア市場の成長性」「同社の情報公開が担う『メディア=メッセージ』機能」「海外展開」に注目です。

目次

  1. 連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調
  2. グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力
  3. 「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる
  4. 成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

1.連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調

2020年11月12日に発表された2020年12月期第3四半期決算について、主な経営指標と事業の進捗、本決算と今後の成長を占う上でのポイントについて見ていきましょう。

サイボウズは1997年に現代表取締役の青野慶久社長他2名により創業。同年にグループウェア「サイボウズOffice」を発売し、以来一貫してグループウェアを磨き上げつつ、メール共有・業務改善アプリのプラットフォームとサービスを提供してきました。

「企業組織のチームワークに貢献する」という使命は内部にも貫徹されており、当社は「社員が働きやすい企業」として認知されています。青野社長はこの分野でも頻回にメッセージを発信し、よく知られた存在です。

2020年12月期の第3四半期決算(2020年1月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりでした。

第1~3四半期の合計で、売上高・営業利益のいずれも前年同期から目覚ましい成長を遂げています。売上高営業利益率は19.9%で、前年同期比から1.4%増の絶好調です。

業績の押し上げ要因は決算資料等を見る限り「特にない」というのが実際のところです。新型コロナウイルス感染拡大による事業活動・業績および会計上の見積もり等への重大な影響もありません。

2019年における前年同期比の数値を見ても、売上高19.2%増・営業利益17.9%増を記録しており、特段の材料がなくとも通常営業で高成長を遂げる局面にあります。

2020年12月期の本決算見通しは以下のとおりです。

第4四半期に発生する広告宣伝費や業績連動型賞与・税金等を加味した結果、通期での営業利益は21億5,700万円を見込んでいます。第4四半期の1月目に当たる2020年10月度の月次決算でも9月までの成長基調を維持。通期予想の達成は堅そうです。

株価について

株価は第3四半期決算発表翌日(11/13)終値で2,970円を付け、時価総額は約1,258億円に達しました。2019年3月の700円近傍を出発点に上げて足を強め、2020年9月24日には3,800円の最高値を付けて投資家は達成感を得ています。

チャート形状的にはダブルトップを形成し、当面は下落基調にありますが、業績好調で下げ材料となるようなニュースは特に確認できていません。業務上のライバルとなる「ナレッジスイート(3999)」「rakumo(4060)」、さらには「東証マザーズETF(2516)」と値動きが重なっていることから、テクノロジー系成長銘柄全般の動意に連動しているという印象を受けます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2.グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力

当社は決算の際に、売り上げ等を事業セグメントに分割する形式を採用していません。商品ごとの売り上げ推移も、四半期短信では発表していないため不明です。当社発表数値およびリサーチ会社等統計数値を押さえつつ、基幹4商品を概観します。

①kintone

14,000社が導入する「kintone」は、データベース・プロセス管理・コミュニケーションの機能を統合した業務改善プラットフォームです。「情報の属人化・二重管理」「進捗共有の不備」「売り上げ・勤怠・交通費等の管理労力」「契約書面準備の際の連絡不備」といった非効率性に対応。メンバー間での顧客・案件・問い合わせの共有・見える化を促進し、時間と手間の削減に寄与します。

「日経コンピュータ 2020年 9 月 3 日号 顧客満足度調査 2020-2021」クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門において2年連続第1位を獲得。2019年12月期(前期)には売上高が前年度比1.4倍、契約社数が前年度比1.3倍の伸びを記録しました。決算説明資料等で基幹4商品の筆頭に挙げられていることから、当社イチ押しの成長商品であるといえるでしょう。

②サイボウズOffice

66,000社が採用する「サイボウズOffice」は中小規模の企業に適したグループウェアの草分け的存在。スケジュール管理や掲示板・ワークフロー・ファイル管理・メッセージ・タイムカードなどの機能を備えています。2001年~2012年まで売上高が減少基調にありましたが、2011年のクラウド版リリースから再成長を開始。現時点では4年連続で最高売上を達成しています。

③Garoon

5,800社が導入している「Garoon」は中・大規模企業向けグループウエアです。ビジネス向けクラウドサービスのレビューサイト「ITreview」のグループウエア部門、ワークフロー部門で高評価(LEADER)を獲得。自社サービスkintoneとの連携に加え、Microsoft 365など他社システム・サービスとの連携も拡大し、利便性を高めています。

④Mailwise

10,000社が採用している「Mailwise」は、届いたメールを複数人で共有し、履歴を一元管理できるメール共有・管理ツールです。お問い合わせメールの対応・管理、顧客とのやりとりの共有、誤送信・二重送信の防止、アドレス帳の共有などが可能となります。

ALTalk指標

ALTalk指標で、サイボウズOfficeとkintoneへのweb訪問数の推移(合算/1年)を見てみましょう。1年で約2倍となっており、継続して注目を集めていることが見て取れます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

次にkintoneスマホアプリのダウンロード数推移(2年)を見てみましょう。移動平均を読み取ると年率40%程度の上昇傾向にあり、利用者増は一目瞭然。2020年3月のダウンロード数は3,466件と突出しており、緊急事態宣言下のリモートワークで利用機会が急拡大したことが分かります。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2020年9月以降のアプリダウンロード数が若干下降傾向にあるのが気掛かりですが、web訪問数は上昇傾向です。潜在ユーザーの伸びが確認できる指標であり、web訪問数は継続的にウォッチしていきたいデータです。

下の表は、年商500億円未満の中堅・中小企業におけるグループウェアの社数シェアを「導入済み」と「新規予定」に分けて集計したものです。大企業は除外されており、また「社数」であり「ユーザー数」ではないため、必ずしもシェアが売上高と一致しないことには注意が必要です。

(ノークリサーチ「2020年中堅・中小市場のグループウェアとビジネスチャットに起きている変化」より作成)

2019年までにOfficeを含めた統合アプリ「Microsoft 365」にリードを許していたものの、2020年の新規導入予定者数ではサイボウズOfficeがトップを奪取。2強体制を形成しています。

3.「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる

これまで見てきたように、当社の商品展開はいずれも「グループウェア」に属するシンプルな事業構造であり、短期的な事業の浮沈を左右する事情も出てきていません。グループウェアが寄与する部課単位のミクロな事業改善は、政策のはやり廃りに影響されにくい地道な分野であるため、当節よくいわれる「DX」や「AI」「フィンテック」のようなブームとは縁遠いものです。

このような銘柄への投資を考えるにあたっては、高成長トレンドを継続していける「事業性」の根本といえる「事業環境」や「強み」を実直に検討・確認していく作業が必要です。当社の成長を占う「3つのポイント」をみていきます。

1. グループウェア市場の成長性
2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成
3.海外展開

1.グループウェア市場の成長性

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長を続ける見込みです。

これまで見てきたように、現時点ではサイボウズ(サイボウズOffice+Garoon)とMicrosoft 365の二強体制となっています。少しさかのぼってシェア推移を確認しても、競争は熾烈ですが短期的に大きくシェアが上下するフェーズとは見えず、一定の均衡状態にあるようです。

このこととグループウェア全体の2020年~2024年の市場成長予想・年率8.8%を突き合わせると、サイボウズOffice・Garoon以外の商品に、当社の売上高前年度比16.3%増という高成長がかかっているという予測が立ちます。kintoneです。

グループウェアの代表格であるサイボウズ Officeとkintoneには以下のような相違点があります。

サイボウズOfficeは社員間の「連携」に重きを置く一方、kintoneは作業道具箱を「最適化」していくイメージで、社員が個々に利用し効率を高める「作業性の向上・省力化」への寄与が大きいといえそうです。

一般的なグループウェアとの比較で、より強く業務改善を志向するkintoneが高成長を継続していけるかが、当社の今後数年を左右する最重要ポイントとなります。

2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成

当社ウェブサイトに「ソーシャルメディア」というページが設けられています。

商品・事業・支社の単位に加え社長がフェイスブックアカウントを公開し情報を発信。さらに読み物コンテンツ(ブログ)として、企業研修についての情報発信を行う「チームワーク総研」と、働き方や仕事を通じた自己実現を主に取り扱う「サイボウズ式」を運営しています。

SNSの積極利用は、よくも悪くもSNSにおける一方向の情報拡散が起こりがちな時代において、ファンをつくる有益な取り組みです。

積極的・継続的な情報発信によって、グループウェア・業務改善プラットフォームについて意思決定を行う企業の人事総務部門やマネジメント層への認知向上が見込めます。

また、サイボウズは社内の働き方を改善する取り組みを長期・継続的に行っており、この点に関する情報公開も盛んです。「働きがいのある会社」ランキングの常連であるほか、ワークライフバランスやダイバーシティについての賞も複数受賞しています。

仕事環境の整備やマネジメント手法についても青野社長がスピーカーとなって積極的に発信しており、これほど経営者の顔やガバナンスの姿勢が知られている企業もなかなかありません。

社員が尊重され、風通しがよく働きがいのある、いわゆる「ホワイト企業」であり続ける努力を行うこと・情報を公開すること・社長の顔が見えることは、1990年代後半~2000年代に誕生し今まさに社会参画を始めつつある「Z世代」へ非常に大きなインパクトを与えます。

短期的な株価動向などに反映されることではありませんが、当社が力点を置く社内統治と情報発信は、最適な人材の獲得と社歴・モチベーションの長期継続に資する決定的に重要な取り組みといえるでしょう。実際、2019年度の当社の離職率は特筆に値する約3.8%という低さです。

さらに言えば、信頼感の醸成は長期的な「雇用コストの適正化」にも役立ちます。

3.海外展開

2019年度の決算報告においてはグローバル展開も強調ポイントとなっていました。

すでに中国・ベトナム・アメリカ・オーストラリアに現地拠点を設けており、製品の多言語化を進めアジア・欧米地域での販売に取り組んでいます。中国語圏では1,030社(前年比+3%)、アジア太平洋地域では590社(前年比+39%)、アメリカでは360サブドメイン(前年比+33%)の成長を示しました。

組織形態の改革も進めており、組織戦略室・事業戦略室を新設して、国外拠点における事業ノウハウの共有・連携を推進しています。

4.成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

本決算では、通期目標の達成度が最大の注目点となります。アナリストのコンセンサスや経営陣からの情報発信などをキャッチするために、情報感度を高くしておきましょう。

2020年以降のグループウェア市場の成長率・年率8.8%に対し、看板商品であるサイボウズOfficeとGaroonはシェア争いを制し、キャッシュカウ(長期収益源)であり続けられるかが第一の注目ポイント。レッドオーシャンを勝ち抜く自信と戦略を聞き取りたいところです。

目下の成長商品であるkintoneと海外展開の進捗は、今後の当社に対する期待=PERを大きく左右します。2020年12月期本決算の説明会において、中長期的な成長目標が出れば、株価上昇の材料となります。担当役員・社長の説明会コメントのニュアンスに至るまで、アンテナを高く張っておきましょう。

上でも言及したALTalkで確認できる「web訪問数の推移」「kintoneアプリダウンロード数」は、kintoneの成長を傍証する貴重な材料です。投資家は定点観測必至といえます。

●類似・競業関係にある企業の動向

一様に増収基調であり、後続の猛追が見て取れます。サイボウズの決算数値・通期予想には、この業界老舗ならではの安定感が感じられます。

●株価指標

サイボウズの株価は1株当たり利益の120.57倍の評価を受けています。

利益を投資に回す局面であるため、成長株の評価はPSR(株価売上高比率)で行うことが多いのですが、10.46倍という水準は成長性がすでに目いっぱい株価に乗っており、既存投資家の期待は高い水準にあります。

自分なりに、短期の材料もしくは長期の成長性をしっかり腹落ちさせて、投資に臨みたい銘柄といえます。サイボウズOffice・Garoonというトップ商品がいまだに高成長局面にあることは、安心材料です。さらなる高成長の芽を逃すことのないよう、参入の機を見据えていきましょう。


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参照資料

2020年12月期第3四半期決算短信
2020年10月度月次
2019年12月期(第23期)決算および2020年12月期(第24期)事業戦略説明会
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