総務省が12月18日に発表した11月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.9%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.9%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.3%となりました。

 前月に続いて3指数ともに前年同月比マイナスとなりましたが、特に生鮮食品を除く総合 の前年同月比-0.9%という下げ幅は 2010年9月に同-1.1%となって以来、10年2カ月ぶりの落ち込みとなりました。

「Go To」事業がなくても物価は下落傾向

 内訳を見ていくと、前年同月比で大きくマイナスとなっているのが「宿泊料」です。前年同月比-34.4%と大きく下落していますが、「Go To トラベルキャンペーン」による割引の 影響であることは言うまでもありません。消費者物価指数の場合、消費者が支払った価格が基になるため、このような割引支援や、消費増税などによって指数が大きく影響を受けることは知っておきましょう。ちなみに、本キャンペーンによる割引を除いた宿泊料は同+0.7%となっています。

 とはいえ、「Go To」事業の影響を除いた試算でも生鮮食品を除く総合は同-0.5%となっているので、「Go To」事業の影響だけが物価下落の原因ではないことが分かります。

エネルギー価格の持ち直しが反映されるのに期待?

 前回の記事「日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認」でも指摘しましたが、2019年10月実施の消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響を品目ごとに機械的に一律に調整した「消費税調整済指数」は8月から3指数が全て前年同月比でマイナスとなっており、既に日本はデフレに再び突入したと考えてもよいと書きました。

 一方で、春先の原油価格下落の影響が時差をもって物価全体に出てきており、持ち直してきて原油価格が反映される数か月後には再び物価は前年同月比でプラスに回復するという解説もありますが、そんなに単純な話ではないということは主張しておきましょう。

 今回発表されたデータも含めて、エネルギー価格の推移を見てみると、下図のように下落傾向にあります。

 昨年の10月に消費増税がありましたが、実は経過措置として電気代とガス代は10月から税率が引き上げられました。その結果、他の品目と比較して、電気代とガス代は1か月後ろ倒しで消費増税の反動による物価下落圧力が表れます。よって、今回のデータから1年間、両品目はマイナス圧力を受けることになります。

オルタナティブデータを見ても目先は厳しい

 既に2020年も終わろうとしている中で、先程の消費者物価指数は11月のものになります。足元の物価動向を把握するため、全国の食品スーパー1200店舗のPOSデータをもとに、ナウキャスト社が提供している日次物価指数「日経CPINow・T指数(物価指数)」を見てましょう。

 11月下旬に日次T指数が前年同月比でマイナスとなっていますが、12月も再び下落傾向にあることが分かります。T指数を構成する品目を細かく見ても、前年同月比で下落に転じた品目数が増えてきており、物価下落圧力は足元でも強くなっていることが確認されます。

第3波による更なる物価下落圧力

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかりません。国内の1日における感染者の報告数が3,000人を超える日が散見されるようになり、東京都内でも1日で800人以上の感染者数が報告される日も現れ始めました。このような状況下、「Go Toトラベル」について、政府は14日に今月28日から来年1月11日まで全国一斉に一時停止することを決め、東京都をはじめとするいくつかの都道府県では飲食店に対する時短営業の要請がありました。

 このような危機を感じるような報道が増えることで、国民は自主的に経済活動を自粛するようになるというのは、これまでの3回の新型コロナウイルスの感染拡大の波における消費関連のデータを見れば分かる話です。ここ数週間の報道を受けて経済活動が抑制されれば、これもまた物価下落圧力になります。

 そして、今年の2月以降は非自発的失業者が増え続けていますが、いまのところその雇用調整は非正規雇用を対象に起こっていますが、10月の労働力調査をみていると、遂に正規雇用でも雇用調整が起こりつつあるかもしれないと考えられる数字が出てきました。

 雇用関連の指標は景気に遅行します。労働市場には第3波の影響が来年以降表れはじめるため、やはり来年も春先は消費が控えられて物価にはマイナスの影響が出ると考えています。よって、来夏あたりまでは少なくとも現在のデフレ状態が続くとみてよいのではないでしょうか。