Zホールディングスは2021年3月期第2四半期決算において、前年同期比で売上高15.1%増、営業利益29.8%増という大幅進捗を発表しました。この多くはZOZOの子会社化によるものです。
来期以降の経営環境を占うには事業の内実をしっかり確認していく必要があります。LINEとの経営統合・PayPayブランドへの大胆な投資・広告事業へのテコ入れなど、話題が目白押しの下半期を展望しました。

目次

  1. 【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に
  2. 【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析
  3. 【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る
  4. 【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

1.【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に

2021年1月に控える第3四半期決算発表の前に、2020年10月末に行われたZホールディングスの2021年3月期第2四半期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

1996年、Yahoo! 米国法人とソフトバンクの合弁でヤフー株式会社が設立されました。以後、孫正義氏率いるソフトバンクの中核企業・ブランドとして、M&Aを繰り返しながら業容を拡大。2019年に行われたグループ再編の際、改めて挑戦の姿勢を世に示すべく新社名に「Y(Yahoo! JAPAN)からZへ」という意味を込め、Zホールディングス株式会社という社名となりました。

インターネット・情報技術で実現できる「利便性」「豊かな生活環境」「社会の発展」の追求を掲げ、その連結子会社数は45社にのぼります。日本を代表するIT企業グループの1つです。

2021年3月期第2四半期決算(2020年4月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

大幅な増収増益ですが、当四半期特有の事情があります。セグメント別の数値とともに確認していきましょう。

モノやサービスを販売・流通するコマース事業の進捗が目立つ半面、メディア事業は減収減益と明暗を分ける形に。新型コロナウイルスはEコマース需要増・広告出稿減と、当社事業に複雑な影響を及ぼしました。

コマース事業の指標には2019年11月にZOZOを連結子会社化したことが大きく寄与しています。売上収益で327億円、営業利益で61億円がプラスされたことで、前年同期比の伸び率がかさ上げされる形となりました。

2021年3月期の通期予想では売上収益1.14兆円(8.3%増)、営業利益 1,600億円(5.1%増)の見込み。既存事業の拡大に加え、下半期は主にコマース事業を中心とした注力領域への積極的な投資を実行するとしています。

株価は決算発表後(11/2)の終値で648.2円、時価総額は約3兆1,268億円となり、10月14日にはここ10年で最高値の790.0円をつけました。この3ケ月の値動き一部上場銘柄ながら東証マザーズ指数に近く、インターネット・DX関連の短期売買資金が多く出入りしている印象を受けます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

2.【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析

Zホールディングスは事業を大きく2つのセグメントに分けて決算発表を行っています。売上高1兆円・連結45社を数え事業領域は多岐にわたるため、比較的売上げの大きい部門および成長著しい部門を押さえておきましょう。

連結の対象となる主な関連会社の一覧です。

《コマース事業》

コマース事業では、ポータルサイト「Yahoo!」ブランドのもとで「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」などのコンシューマーサービスを手広く展開。ASKULやヤフオク!の法人向けシステムなどBtoBも強く、売上高はビジネス関連がコンシューマーを上回っています。

ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」は2020年のウェブサイト訪問者数ランキングでグーグルに次ぐ国内第2位。ニュース・メール・天気予報・検索といった日常生活の情報源をコンパクトにまとめ、オンライン接続ドアとしての強みは圧倒的です。堅いブランドイメージを保持し、関連サービスへの直接的な送客チャネルとして機能しています。スマホアプリ「Yahoo! JAPAN」は2019年の日本でのダウンロード数で7位につけていますが、スマホ世代の若年層への浸透は十分とはいえません。

コマース事業のKPIのうち「物販取扱高」は1兆2,535億円で前年同期比+30.8%、予約サイトや電子書籍などの「サービス・デジタル取扱高」は2,386億円で+3.4%となっています。前者は新型コロナウイルス感染拡大による消費チャネルの変化を追い風に成長した一方、後者は行動自粛とGo To キャンペーンの影響が入り交じりの小幅な成長となりました。

コマース事業に属する金融部門では、既存のサービスをソフトバンクグループが推進しているバーコード決済サービス「PayPay」ブランドに統一し、消費生活全般の金融サービス需要をカバーする「シナリオ金融」構想を推進。完全子会社「Zフィナンシャル」を中心にクレジットカード・銀行・証券・保険・FX・資産運用などを手がけています。

ソニーやトヨタなど、金融部門を祖業と並ぶ、もしくは凌駕する収益エンジンに成長させた先達は複数存在しており、ソフトバンクグループの金融部門を担う当社に強い期待がかかります。

金融事業のKPIである「クレジットカード取扱高」は1兆1,396億円で前年同期比+28.9%。Yahoo! カードとPayPayの連携による優遇キャンペーンの効果が出ているようです。

ALTalkではPayPayのアプリダウンロード数を確認できます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

ここ3年を見ると、2019年のダウンロード数増が目につく一方、今年に入っての減少が気にかかります。QRコード決済におけるPayPayのシェアは約55%と独り勝ちの状態にあり、大規模キャンペーン等で拡大する時期は過ぎたということかもしれません。

コマース事業/パーソナル部門の売上高推移を確認すると、PayPayアプリダウンロード数の増減から少し遅れて売上高が追っているように見えます。

疑似相関の可能性はありますが、PayPayのキャンペーンがコマース事業の売上をかさ上げしている、いわばタコ足食いの可能性も排除できません。毎四半期決算で発表されるKPI「PayPay決済回数」で進捗の裏取りは行っておきたいところです。

《メディア事業》

メディア事業は主に子会社であるヤフー株式会社の所管です。検索連動型広告などのネット広告関連サービスを提供しています。一般的な広告スペース提供のほか、新型コロナウイルスの蔓延を受け感染者情報ページの解説や学校休校支援に向けた学習コンテンツの提供を行うなど、消費者サービスというものを「公共性」や「好感度」も含め重層的にとらえている点は大いに好感が持てます。

メディア事業のKPIである「広告関連売上収益」は1,629億円で前年度比+1.6%の小幅な成長。ここ数年は5~7%程度の安定成長路線でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響で出稿が停滞。景気依存の面が強いという広告の限界を打破すべく推進中の「Yahoo!セールスプロモーション」については後述します。

セグメント別の売上高・営業利益は以下のとおりです。

コマース事業とメディア事業は売上高には約2,700億円の差がありますが、セグメント利益にはほとんど差がありません。原価のかからない広告ビジネスの効率性が表れている形ですが、経済状況に左右されやすい面も。下半期はコマース事業を中心に投資し収益基盤の拡大を狙います。

3.【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る

Zホールディングスの今後を、3つの「切り口」から読み解いていきます。

① LINEとの完全統合
② 2021年3月期・下半期の重点投資
③「経済圏」バトルの帰趨

①LINEとの完全統合

Zホールディングスは、国内スマホユーザーが利用するコミュニケーションツールではスタンダードであるLINEの運営と関連サービスの提供を行う、LINE株式会社の子会社化を2021年3月頃を目標に推進中。確固たるチームワークとサービス連携・統合によるシナジー発揮に重点を置いています。

LINEとの経営統合のメリットは2点に集約されます。1点目が、長くパソコンベースでのサービス展開を行ってきたヤフーが、LINEを通じスマホユーザーとの接点を強化できること。アプリとしてのLINEおよび付随サービスのコアユーザーである若年層を取り込むことで、全世代をカバーする長期的な成長戦略の立案およびサービス展開が可能となります。その延長線上には、国内オンライン・コンシューマーサービスのプラットフォームとして盤石の体制を整え、アマゾンやテンセントといったグローバル企業とのサービス競争に勝ち抜くという大きな目的があります。

統合により提供中のサービスがどのように整理・統合されていくかは明らかになっていません。今後のプレスリリースや決算発表に要注目です。

②下半期の重点投資を点検

コマース事業では、

  • PayPayを用いた特典付与、イベント(超PayPay祭)開催
  • クレジットカード(PayPayカード)会員拡大施策

これらの施策により「Eコマース利用者の優良顧客化、周期的購入の習慣化」「クレジットカードのアクティブ会員数拡大」を図るとしています。

加えて、あらゆる金融サービスをPayPayブランドに統一してYahoo! ブランドのサービス利用者が決済でPayPayブランドを利用する機会を増やし、両ブランドのシームレスな共通利用を推進します。

こうしたPayPayを中心とするコマース事業の施策には1つ、気がかりな点があります。利用した人なら誰もが感じている「QRコード決済は最も便利な決済手段とはいえない」ことです。

日常的な使い勝手は、電子マネー>クレジットカード>QRコード決済であり、QRコード決済には迅速性・スマホの電源・電波状況による処理遅滞などの問題がつきものです。クレジットカード会員数の拡大を重点項目としていますが、成熟市場であり急速な拡大は易しいものではありません。

PayPayブランドを利用者にとって価値あるものとしSuicaや楽天Edyから決済金額を奪うためには、PayPay特典・イベントといったいわば「金配り」をやめることはできません。後述する他の「経済圏」との戦いに勝つための体力勝負となります。

体力勝負という観点では、Zホールディングスが所属するソフトバンク陣営にはすでにPayPayをQRコード決済の最強ブランドに育てた実績があり、古くはYahoo! BBでADSLに打って出た際の成功体験があります。縦横無尽な資金調達も得意とするところであり、大盤振る舞いも勝つまでやり切れば勝つ……という世界かもしれません。

メディア事業では「統合マーケティングソリューション」の確立に期待がかかります。Zホールディングスに蓄積されるビッグデータを活用し、広告による認知→PayPay特典付与→消費者の購入行動とつなげるマーケティング活動支援サービス「Yahoo!セールスプロモーション」です。

2019年より提供開始となったサービスで、広告事業の中でも成長著しくインパクトは大です。本年度上半期と前年度下半期の比較で、Yahoo!セールスプロモーション経由の広告売上収益は2.6倍となっています。ショッピング広告には季節性があり、下半期の売上げが上半期を3割程度上回る通例にかんがみれば、Yahoo!セールスプロモーションが急速に認知されていることがわかります。

BtoBサービスのため実状が見えにくい部分があり、「広告主にとって真に実用的なものになっているか」という点は今後の情報を待ちたいところです。本来、PayPay特典付与といったプッシュ型マーケティングの訴求力をより確かなものとするためには、決済データと購入された商品がつなぎ合わされた形で利用できればベストのはず。コンビニエンスストアがPOSデータの蓄積・分析からマーケティング施策を立案するイメージです。現状、PayPayの決済データは購入情報と紐づけされていません。

いかに実用性を高め広告主に訴求していくかは技術の核であり、尋ねてわかることでは当然ありませんが、プレスリリースや四半期決算等で情報が得られるか、ウォッチすべき項目の1つといえます。成長商品ですが、投資家としては過信は禁物です。

③「経済圏」バトルの帰趨を占う

LINEとの統合は、Zホールディングスが若年層へ訴求する力を飛躍的に高めます。アマゾン、デンセント等グローバル企業への危機感が素地にあることは先述しましたが、同時に国内のライバル「経済圏」との競争に勝ち抜くことも重要です。

消費者向けサービス市場では、携帯キャリアを核として様々なサービスが連携して展開・相互に送客を行い顧客を取り合う経済圏バトルが激化しています。経済圏は、決済手段やポイントサービスを通じた顧客の囲い込みによって形成されます。現状は、PayPay決済を中心とするヤフー・PayPay経済圏、楽天カード・楽天Edyを擁する楽天経済圏、dポイントを育成し業務提携で固めるドコモ経済圏の三つ巴です。

それぞれの経済圏に特有の強みと弱みがあり、現時点では覇権は定まっていません。ヤフー経済圏はLINEとの経営統合によってサービスラインナップが大きく充実することに加え、ソフトバンクグループのアセットを利用することができれば、一歩抜きんでる存在になる可能性があります。中国の大手総合IT企業アリババやウーバーといった海外の著名なサービスとのつながりは他の経済圏にはないものです。

一消費者として各経済圏の「使い勝手」や「ブランドイメージ」を考えてみることも投資判断の良い材料になるでしょう。

4.【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

Zホールディングスの第2四半期決算は大幅な増収増益となりましたが、実状はZOZO連結のインパクトが大きかったといえます。2021年3月期の通期予想は売上収益1.14兆円(+8.3%)、営業利益 1,600億円(+5.1%)と慎重な見込みです。

ここまで当社の業績・成長戦略・施策・競争環境を分析してきましたが、これらのファクターを株価展望に結びつけるにあたっては、「親子上場」が問題となる場合があります。

Zホールディングスの連結対象企業のうち、売上高の大きい3社がそれぞれ単独で株式を上場しています。

アスクル、バリューコマース、ZOZOの利益は、それぞれの企業の株価とZホールディングスの株価の双方に影響を与えます。

本来はあくまで個別企業の利益ですが、連結(個別)企業の投資家が利益に対して何倍の価格で購入するか(PER)と、Zホールディングスの投資家が投資する場合のPERは常にずれが生じます。いわば一物二価の状態です。この意味で、親子上場は投資家が親子それぞれの企業の利益を適切に評価することを妨げています。

現時点では、ZホールディングスのPERは各連結企業より少々低めといったところです。購入を検討している投資家にはお得に感じられる一方、購入した後、株価が伸びにくい可能性もあります。ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株に投資した際に、多角的な事業構造のため企業価値が割安に評価される「コングロマリット・ディスカウント」という言葉が聞かれましたが、当社に投資する際にはディスカウントとなるのかプレミアムが生じるのか、とくに長期投資を考える向きは気にしておいた方が良いかもしれません。

今後の成長と株価を占うにあたっての最注目ポイントは、金融部門のPayPayブランドの統一効果です。金融部門は現時点での収益寄与は大きくありませんが、うまく育てば優秀な利益セクターとなることはソニー、トヨタなどの前例が証明しています。KPIである「クレジットカード取扱高」「ジャパンネット銀行口座数」は四半期ごとにチェックしておきましょう。前提となる「PayPay決済回数」「累計登録者数」の伸びも重要です。

収益寄与の観点からは、コマース事業に比べ利益率が圧倒的に高いメディア事業で推進している「Yahoo!セールスプロモーション」の進捗についても情報収集に努めたいところです。広告はBtoBのサービスであり投資家が直接動向を知ることはむずかしいのですが、プレスリリースや@DIME、ITmedia等のメディアで動向がわかる可能性もあるので気にかけておきましょう。

第3四半期の業績への影響はまだ少ないものですが、2021年度以降はLINEとの統合が本格的に当社の事業をリフォームしていきます。重複事業の整理やシナジーについて聞こえてくる内容によって、先回りして資金を投下しておくべき場面もあり得るでしょう。若いLINEユーザーをヤフーブランドのサービスに誘導する導線をうまく設計できるかがシナジーのカギとなるため、こうした点を考える際も前述のテック系メディアが参考になります。

類似・競業関係にある企業の動向は以下のとおりです。

経済圏でライバル関係にある両社とも売上成長は高い水準を見込んでいます。楽天は携帯事業の先行投資が響いており、利益については参考になりません。

株価指標については下記のとおりです。

Zホールディングスの株価は1株当たり利益の36.30倍の評価を受けています。日本を代表するオンライン・コンシューマーサービス企業として、海外企業に伍していく期待が込められた評価になっているようです。

ヤフー・PayPay経済圏が楽天・ドコモの経済圏との戦いを勝ち抜いていけるか、ユーザーとしての実感が投資に活かされることもありそうです。PayPayブランド育成にあたり投資先行のフェーズが続きますが、投資家としては費用対効果を厳しく見ていく姿勢が求められます。


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参照資料

2020年度第2四半期(7-9月期)決算説明資料
2021年3月期 第2四半期決算短信
2020 年度第 2 四半期決算説明会(2020 年 10 月 30 日開催)質疑応答要旨
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