出前館は、出前フード専門Webサイトの「出前館」を運営しています。2016年に配達機能を持たない飲食店向けへの配達代行サービスである「シェアリングデリバリーサービス(R)」を開始。19年11月にそれまでの「夢の街創造委員会」から現社名に変更しました。現在の筆頭株主はLINEです。

2020年初め頃からの新型コロナウイルス感染拡大を受け、「3密」を避けるためのニーズとしてフードデリバリーの引き合いが活発化し、株価も上昇。市場の関心が高い銘柄です。

一方、中期経営計画で事業拡大のための大規模な投資実行で、2021年8月期も大幅な営業赤字予想を打ち出し、実現性に懐疑的な見方も浮上しています。業績の実績と予想、そして中計の内容や可能性などについて取り上げます。

目次

  1. 2020年8月期は26億円の営業赤字、売上高55%増も先行費用負担増
  2. 営業赤字は今期がピーク、中計最終年には120億円の黒字を目指す
  3. 新型コロナウイルス感染拡大で事業環境は追い風、デリバリーが日常に定着も
  4. 【まとめ】PSRは許容範囲、中計の達成可否は新型コロナウイルス感染症の収束時期との兼ね合いか

1.2020年8月期は26億円の営業赤字、売上高55%増も先行費用負担増

まずは直近の決算などについて分析したいと思います。

2020年10月15日に発表された2020年8月期決算(19年9月~20年8月)は売上高103億600万円(前年比54.6%増)となりました。

新型コロナウイルス感染拡大によってこれまでの日常生活が脅かされる中、「在宅勤務へのシフト」、「自宅での食事機会の増加」、「飲食店における営業時間短縮および座席数削減」が広がった結果、外食から中食へのシフトが進み、テイクアウトやデリバリーに対するニーズが拡大。同社の「シェアリングデリバリー(R)」を活用してデリバリーを開始する飲食店が急増しました。

こうした中で、同社では需要に応じるためにサービス展開を加速し、2020年8月末時点で1都1道2府21県まで拡大。ユーザー利用の拡大のために、タレントの浜田雅功氏をCMに起用するなどプロモーション強化に、先行費用がかさみ営業赤字になった格好です。

第2四半期決算発表時点(3月26日)で株価は660円、時価総額は約564億円でしたが、10月15日時点では株価3,025円、時価総額は約2,585億円と急増しています。

2.営業赤字は今期がピーク、中計最終年には120億円の黒字を目指す

2021年8月期は売上高280億円(前期比2.7倍)、営業損益130億円の赤字を見込んでいます。出前館流通金額は1,600億円(同2.5倍)となる見通しです。今期の赤字も業容拡大のための先行投資が要因です。

そして2023年8月期の出前館流通金額は3,400億円(20年8月期実績は1,027億円、売上高970億円(同103億円)、営業利益120億円の黒字(同27億円の赤字)を目指しています。

(「2020年8月期(第21期)通期決算説明会」より)

中期経営計画では「出前館×LINEで実現したい世界」「デリバリーの日常化」で、具体的には2021年8月期を出前館事業拡大のための大規模な投資実行、2022年8月期に出前館サイトの収益化、そして最終年の2023年8月期に「シェアリングデリバリー(R)」の通期黒字化を目指しています。

加盟店舗数は2022年中に10万店(20年7月で3万店)を達成予定。また、ユーザー数の拡大ではLINE IDとの連携(LINEの利用者は8,000万人超)を活用、「シェアリングデリバリー(R)」では人口カバー率50%以上(20年8月で30%)に拡大させる方針です。

営業赤字は今期がピークで、来期である2022年8月期は20億円の赤字まで縮小する計画です。中計最終年の2023年8月期は120億円の黒字を見込んでいます。売上高の伸びの大半は「シェアリングデリバリー(R)」の拡大による配達代行手数料の増加によるものです。

3.新型コロナウイルス感染拡大で事業環境は追い風、デリバリーが日常に定着も

新型コロナウイルス感染症の感染者数の増加が続いており、北海道や大阪府などでは飲食店の営業自粛が継続しています。感染はむしろ拡大気味に推移しており、フードデリバリーのニーズは拡大基調にあります。こうした流れが日常生活の中で定着しつつあるのは、同社にとって事業環境は追い風とみることができます。

ALTalk指標を見てみると、web訪問数もこの半年間、一定数を維持していることがわかります。

(ALTalk「出前館の指標」より)

【まとめ】PSRは許容範囲、中計の達成可否は新型コロナウイルス感染症の収束時期との兼ね合いか

020年8月期実績、2021年8月期計画でわかるのは、売上高の面では事業環境のフォローアップの風をとらえて、大幅な増収ペースを維持していることです。また、フードデリバリーが日常生活に溶け込みつつあり、一気に減少することは考えにくいといえます。

一方、会社側ではこの機をとらえて、一気に攻めに打って出ています。それが中計に反映されています。2020年8月期は攻めが吉と出て株価も大きく上昇しました。現在でも株価は高値圏にあり、投資家の評価は高いといえます。

今後の注目ポイントは、例えば新型コロナウイルス感染症のワクチンが行きわたり、感染者数が減少し、「アフターコロナ」への生活シフトが進むケースです。外出が自由になり、夜の飲食店街へも普通に出入りできる状況になった際に、デリバリー需要が後退することも想定されます。

出前館の株価指標をみておきましょう。

(2020年12月11日現在)

赤字なのでPER(株価収益率)は算出できず、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)も営業キャッシュフローが赤字なので算出できません。PSR(株価売上高倍率=時価総額÷予想売上高)は一般的に、20倍以上なら割高、0.5倍以下なら割安とみなす指標で、同社のPSRは許容範囲内とみることができます。

今後は四半期ごとの決算で、特に売上高の動向をチェックすることが重要と思われます。攻めの投資が実を結べば、フードデリバリー業界の勝ち組として一段の評価を得られるとみられる半面、新型コロナウイルス感染症が鎮静化となった場合でも成長できるか――。LINEとの連携などの動向にも注視しておきたいところです。


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