メドピアは2020年9月期決算において、前年同期比で売上高1.7倍、営業利益2.0倍という驚異の成長を見せつけ注目を集める存在です。新型コロナウイルス感染拡大を機に、さまざまな分野で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)が医療にも到来し、好調の波に乗っています。

先行きを占うための必須ホームワーク、「2つのマクロファクター」と「ライバルとの闘い」をいかに見据えるかを徹底解析しました。

目次

  1. 2020年度の売上高は前年同期比1.7倍、営業利益は2.0倍も増加!来期予想も強気
  2. 「集合知プラットフォーム」MedPeerを土台に、「プライマリケア」「予防医療」2つのセグメントを急速育成中
  3. 「ウィズコロナとアフターコロナ」「デジタルエイジの高齢化」というニッポンの課題に医療DXで立ち向かうメドピア
  4. 成長の土台をなす会員数の増加施策に注目。競合のエムスリー・ケアネットとのすみわけや投資施策の相違などにも注意を払いたい

1.2020年度の売上高は前年同期比1.7倍、営業利益は2.0倍も増加!来期予想も強気

2020年11月12日に行われたメドピアの2020年9月期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

メドピアは2004年、現代表取締役社長・CEOの石見陽氏が設立。当時の商号は「株式会社メディカル・オブリージュ」でした。2007年に医師専用コミュニティサイト「Next Doctors」(現MedPeer)の運用を開始すると、2010年には商号をメドピア株式会社に変更。2014年に東証マザーズ市場への上場を果たしたのち複数企業の子会社化を経て業容を拡大、そして2020年9月には東証第一部へと鞍替えします。
「集合知により医療を再発明する」というビジョンのもとに、医師を支援し、患者を救うことをそのミッションとしています。

2020年9月期決算(2019年10月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

当期は売上高・営業利益のいずれも前年比で大幅な進捗を見せました。売上高営業利益率は20.8%で前年同期比から2.5%増。各事業領域でDXが加速し、新規連結したコルボ(医療系コンテンツ企画制作会社)を除いても大幅な増収増益という絶好調ぶりです。

事業別に見ても、2部門とも急成長の過程にあります。とくに法人向け医療相談アプリと、健康保険組合向け特定保健指導サービスを擁するヘルスケアソリューション事業の利益率進捗は急で、売上が損益分岐点を超えてきたようです。

2021年9月期(来期)の通期予想では売上高は1.4倍、営業利益および当期純利益は1.5倍の成長率を見込んでいます。

セグメント別では、ドクタープラットフォーム事業の売上高成長率が45.4%増、ヘルスケアソリューション事業の売上高成長率は26.2%増を見込む強烈な強気。医療DXのさらなる進展への自信がみなぎっています。

ALTalk「メドピアの指標」より

株価は決算発表翌日(11月13日)の終値で5,390円、時価総額は約1,157億円となっています。その後は、新型コロナウイルス感染拡大にともなうワクチンの研究開発や、医療従事者への支援の必要性といった報道を境に、DXをテーマとする他銘柄から一定の資金流出がみられるなか、株価は上昇し12月2日には7050円の最高値をつけました。

2.「集合知プラットフォーム」MedPeerを土台に、「プライマリケア」「予防医療」2つのセグメントを急速育成中

メドピアの業績をセグメントで見ると以下のとおりとなります。

ドクタープラットフォーム事業は、「集合知プラットフォーム」と「プライマリケアプラットフォーム」から構成されています。

「集合知プラットフォーム」は会員12万人の医師向けコミュニティサイト「MedPeer」が大黒柱です。製薬企業や医療機器メーカーが疾患・薬剤の啓発や情報提供、Web講演会といったマーケティングを行う場として機能するとともに、コンテンツ制作まで受注します。

MedPeerは、医師向けのメディアの中でも広告メディアやMR、学会・研究会とは異なり、ユーザーである医師の投稿でコンテンツが生成・増殖していくユーザー参加型のソーシャルメディアであることが最大の特徴です。

さらにMedPeerは、関連事業である人材マッチング・開業/経営支援サービスへの送客機能をも担っており、会員数増加と高利用率の継続が目下の強みです。新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化するなか、MedPeerのページビューは前期比1.7倍に増加しました。

「プライマリケアプラットフォーム」は、薬局・クリニックの「かかりつけ化」を支援するアプリ「kakari/kakari for Clinic」を展開。薬局へのチャット相談・電子お薬手帳に加え、薬局での待ち時間を短縮する「処方せん送信」「チェックイン」機能を持つ「kakari」は、KPI(重要業績評価目標)としている「週次処方せん送信数」「週次チャット送信数(患者様→薬局)」のいずれも飛躍的な進捗を見せています。

薬局向けアプリ「kakari」とクリニック向けアプリ「kakari for Clinic」の連携によりサービスを強化し、2033年までには「集合知プラットフォーム」、後述の「予防医療プラットフォーム」と並ぶ三本柱の一角として育成するべく、積極投資を推進するとしています。

ヘルスケアソリューション事業ではアプリを媒介とする「予防医療プラットフォーム」を展開しています。

子会社「MEDIPLAT」が手がける法人向け産業保健支援サービス「first call」は、チャット医療相談や、TV電話による産業医面談、さらにはストレスチェックを提供。おもな顧客である法人・健康保険組合の契約数は、2019年度の289件から2020年度には573件と約2.0倍の高成長を見せました。2021年度の売上高は2020年度比1.9倍の成長を見込んでいます。

子会社「FitsPlus」では健康保険組合向け・特定保健指導サービスを手掛けており、管理栄養士による食生活指導を店舗・アプリの両面で提供。2021年度の売上高は2020年度比約1.3倍の成長を見込んでいます。

サービス開始から13年が経過した「MedPeer」は安定収益基盤として事業の投資資金を捻出するセグメントでありながら、それ自体もいまだ高成長期にあることが当社の指数関数的な成長を支えています。事業の核は、MedPeerのアクティブ会員数を支える「コンテンツ力」にあるとみることができそうです。

3.「ウィズコロナとアフターコロナ」「デジタルエイジの高齢化」というニッポンの課題に医療DXで立ち向かうメドピア

メドピアの事業に関わる2つのマクロファクターを検討していきます。

①新型コロナウイルス感染拡大:ウィズコロナとアフターコロナ
②デジタルエイジの高齢化

①新型コロナウイルス感染拡大:ウィズコロナとアフターコロナ

新型コロナウイルス感染拡大における「人と人との対面を強く制限する」という性質は、医療におけるDXを推進するメドピアに強い追い風を吹かせています。

「集合知プラットフォーム」の主軸である「MedPeer」は、新型コロナウイルス感染拡大を背景に大きく躍進した部門です。

製薬企業のマーケティングは本来、MR(医療薬事情報担当者・製薬企業の営業担当)の訪問による部分が大です。新型コロナウイルス感染拡大はこのチャネルを大幅縮小に追い込みました。  

新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れた病院のうち、MRの訪問自粛要請を行った割合は91%、患者を受け入れていない病院でも82%が自粛要請を行っていたという調査があります。MRもオンラインでの営業・情報提供活動を行ってはいるものの、足しげく訪問することで多忙な医師との面談機会を得るという従前の手法が取れなくなったことは大きな痛手です。

これを機に、製薬企業・医療機器メーカーはMedPeerのようなコミュニティサイトを利用して、疾患・薬剤について啓発するコンテンツを提供したり、Web講演会を行ったりなど、マーケティングリソースをオンラインに割く流れを強めました。ウィズコロナにおいてMRの役割は縮小する一方です。

この傾向がアフターコロナで巻き戻るという合理的な理由を思いつくことはできません。医薬品・医療機器のマーケティングにおけるDXは、医師にとっては時間と手間が省け、製薬企業・医療機器メーカー本部にとっては経費削減ができWin-Winです。

医師の働き方改革や、避けがたい医療費削減の流れのなかで、医師の生産性を上げていくためにも医療のDXは不可避であり、メドピアはその最前線に立っているといえます。

②デジタルエイジの高齢化

「顧客」という観点から医療を眺めると、高齢者の圧倒的な存在感に気づかされます。

一人の人間が生涯に使う医療費の平均は約2,700万円ですが、全体の6割を65歳以上で使います。そして75歳以上で使うのは全体の4割にものぼります。日本の医療費の半分以上が高齢者医療にあてられているのです。

現時点で70歳以上の世代には、現役時代にデジタル化の波を受けなかった方が少なくありません。この先スマホやパソコンを使える方が著増するかといえば、疑問です。つまり、医療の「提供者」におけるDXについては前述のとおりの進捗ですが、「顧客」のDXはこれからが本番だということです。

70歳以上の高齢者は2050年まで増加し続け、そのなかでスマートフォンを使える割合も増加の一途。顧客を巻き込んだ医療DXのプラットフォームとして、今後、薬局とクリニックを統合したアプローチで集客の効率化・省力化を推進できる「kakari/kakari for Clinic」に大きな期待がかかります。

 「予防医療プラットフォーム」の「first call」についても同様です。高齢化と財政難は医療需要のコントロールと医療費削減を強く要請し、予防医療の重要性は増す一方。そのため「first call」が一役買う場面が到来しています。

現状はおもに法人需要に応えるプラットフォームとなっていますが、新型コロナウイルス感染拡大の第一波が襲来した2020年3月には、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の一環として経済産業省が設置する「健康相談窓口」に選定され、個人顧客に利用されるという実績を得ました。

この先、不要の受診削減に向けた医療相談推進という展開があれば、すでに実績のある「first call」にとって大きなチャンスとなります。「健康経営」の推進や「人生100年時代」を迎え、定年延長や再雇用の義務化がより強く企業に求められていくことによる労働者の高齢化なども含め、「first call」の需要が拡大する余地は大きいといえそうです。

「first call」のアプリダウンロード数をALTalkで確認することができます。2020年11月にダウンロード数が急上昇していますが、これはアクサ生命が法人顧客向けに提供する「健康経営サポートパッケージ」に「first call」のメンタルチェックが採用されたため、顧客企業の社員がダウンロードした可能性が考えられます。

ALTalk「メドピアの指標」より

アプリのダウンロード数はサービス利用の前提であり、法人顧客の契約継続に関わる指標といえるので、定点観測に適しています。

デジタルエイジの高齢化については、医療政策にどう落とし込まれるかによってメドピアへの風の吹き方が変わってきます。腰を入れた投資を考える向きは、社会保障・保険医療などの審議会にも注意を払っておくべきといえます。

4.成長の土台をなす会員数の増加施策に注目。競合の「エムスリー」や「ケアネット」とのすみわけや投資施策の相違などにも注意を払いたい

メドピアの2020年9月期決算は絶好調の一言です。来期に向けても売上高1.4倍、営業利益および純利益は1.5倍の成長を見込む強気の予想で、経営陣は自信満々です。

今後の成長と株価上昇を占うにあたって、まず注目すべきは売上の約7割、営業利益の約8割を占めるドクタープラットフォーム事業の主軸となっているMedPeerの動向です。

実は、現状の会員数12万人はライバルであるエムスリー(約29万人)、ケアネット(約16.1万人)の後塵を拝しています。

製薬会社・医療機器メーカーのマーケティングチャネルとしての収入がMedPeerを支えており、会員数はクライアントに訴求するもっとも重要な指標です。会員数増に向けての直接の施策やコンテンツの充実について、定点観測を行っていきたいところです。

当期ではコルボ(医療系コンテンツ企画制作会社)の子会社化は特筆すべき動き。MedPeerにおける動画コンテンツの拡充も早期シナジーの表れとみることが可能です。ライバルであるエムスリー、ケアネットとの差異の把握やコンテンツ力の評価は、長期ホルダーには必須のホームワークであり、メドピアのプレスルーム(https://medpeer.co.jp/press/8491.html)は定期的に見ておきましょう。

自分がクリニックで受診する際など、ユーザーである医師に聞いてみるのも面白い取り組みです。メドピアのコンテンツについての評価や、エムスリー・ケアネットとの相違やすみわけなどについて生の声を聞くことができた際にはIRに伝えてみましょう。株価上昇の一助になるかもしれません。

ALTalkでは、メドピアの主力商品であるMedPeerのweb訪問数も確認できます。

ALTalk「メドピアの指標」より

長期的に安定利用されているかのチェックは重要です。ただしアプリからのアクセスはweb訪問数には反映されません。一定の規則性をもって山と谷を繰り返す傾向をみてとることができ、短期的に一喜一憂する必要はないと考えられます。

類似・競業関係にある企業の業績予測は以下のとおりです。

一様に増収増益フェーズにあり、医療DXは明らかに成長セクターといえます。売上高・営業利益の増加率は売上高の規模と逆相関しています。身の丈24~40倍の巨人エムスリーを高成長で追いかけるメドピア、ケアネットという図式です。

ここ2年の株価チャートを重ね合わせると3社ともほぼ同様の軌跡を描いています。投資家が重なっている印象です。

メドピアの株価は1株当たり利益の112.1倍の評価を受けており、ファンダメンタルズを評価して株価を予想するフェーズにはありません。

サービス開始から13年が経過し、なおも成長しているMedPeerを擁する点は安心材料です。競合他社も一様に高い評価を受けており、メドピアだけが過大評価というわけではありません。決算資料において来期の売上高1.4倍、営業利益1.5倍と自信を見せた点も好材料です。

ウィズコロナ・高齢化といったマクロファクターが軒並み強力な追い風となるなか、競業他社から際立つ独自性を打ち出し、高成長を継続できるかの見極めが投資家には求められます。

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参照資料

①2020年 9月期 決算説明資料
2020年 9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
③IRページ