日本では、ここ数年でCtoC-EC市場(個人間電子商取引市場)が急成長しています。経済産業省の推計によると、2018年には1兆5,891億円だった市場規模が2019年には1兆7,407億円と9.5%も伸びています(※1)。

現時点での、この市場のトップランナーは、フリマアプリ「メルカリ」の企画、開発、運用を手がけるメルカリ(4385)で、月間アクティブユーザー数1,755万人、累計出品数15億品以上にのぼります。

とはいえ、ライバルには、楽天グループの「ラクマ」や、オークションサイトで国内最大級の「ヤフオク!」によるフリマ出品、スマホ決済サービス「PayPay」の「PayPayフリマ」など錚々たるメンバーが居並びます。

市場拡大が期待される一方、競争も激しさを増しそうななかでのメルカリの2021年6月期第1四半期決算の注目ポイントを取り上げました。

(※1)出所:経済産業省商務情報政策局情報経済課「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」

目次

  1. 月間出品者数1,755万人、累計出品数15億品以上の業界最大手サービス
  2. 売上高は前年同期比52.3%増、営業利益は2四半期連続の黒字に!
  3. コロナ禍にありながらもビジネスを順調に拡大
  4. 流通取引総額はメルカリJPで前年比+20%以上、メルカリUSで同+50%以上を想定

1.月間出品者数1,755万人、累計出品数15億品以上の業界最大手サービス

メルカリのウェブサイトによると、創業者である山田進太郎氏が、世界一周の旅で「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」という問題意識を抱き、フリマアプリ「メルカリ」が生まれたそうです。

そんな同社では、「世界中の個人と個人をつなぎ、誰もが簡単にモノの売り買いを楽しめる。それにより資源を循環させる豊かな社会、個人がやりたいことを実現できる社会をつくっていきたい」という目標を掲げています。

フリマアプリ「メルカリ」の利用実績は、下図の通りです。

通年の流通取引総額や売上高、ここ3期の第1四半期の売上高、月間アクティブユーザー数とも順調に伸びています。

2.売上高は前年同期比52.3%増、営業利益は2四半期連続の黒字に!

10月30日に発表された2021年6月期第1四半期の業績を見ていきましょう。

売上高は、前年同期比で52.3%増の221億5,600万円と大きく伸びています(百万円未満切り捨て、以下同)。

本業での儲けである営業利益は3億6,400万円と2四半期連続の黒字に。経常利益は2億6,200万円と黒字化、親会社株主に帰属する四半期純利益は42億8,100万円と黒字化で、売上高、利益とも高い伸びを示しました。

メルカリJPでは、売上高が前年同期比33%増の159億円となりました。調整後営業利益は前年同期比115%増の46億円となったものの、従業員向けの一時的な賞与支給により、調整後営業利益率は29%に低下しています。

同社では、一時的な賞与について、業績向上の成果を従業員と分かち合うためであり、恒久的な政策ではないとしています。

●2021年6月期の連結業績予想

メルカリでは、2021年6月期の連結業績予想について、新型コロナウイルス感染拡大による影響により「合理的な業績予想の算定が困難」であるとして発表していません。

株価は第1四半期決算発表時点(2020年10月30日)で4,400円、時価総額は約6,900億円でしたが、11月27日時点では株価は4,655円、時価総額は約7,300億円とほぼ横ばいです。ちなみに、初来高値は10月14日の5,930円となっています。

ALTalk「メルカリの指標」より

3.コロナ禍にありながらもビジネスを順調に拡大

●メルカリJP

2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、国内外が未曾有の危機に直面しました。そのなかにあって、メルカリでは、流通総取引額が前年比34%増の1,706億円、月間アクティブユーザー数は前年比21%増の1,755万人と順調に成長を続けています。

ALTalk指標で同社の「web訪問数」と「アプリダウンロード数」を見てみました。web訪問数はコロナ禍にあっても順調に伸びています。また、アプリダウンロード数も安定的に推移し、利用者を着実に増やしている様子がうかがえます。

ALTalk「メルカリの指標」より

この背景には、2020年5月から始まったドコモとのID連携があるようです。ID連携数は2020年6月末の130万から、同9月末には340万と大きく増加しています。

ID連携によってメルカリ内で「dポイント」が利用可能になったほか、メルカリの利用で付与されたdポイントを使って、メルカリで新たに購入するという好循環も発生しているようです。

前月にメルカリで商品を売却し、当月に購入した場合には、dポイントの付与額が0.5%から1.5%にアップする施策が出品増につながっているとも見られます。

また、dポイントの利用増加により、クレジットカードを利用した場合に比べて支払手数料(決済手数料)が減少することも、プラスに作用しているようです。

●メルペイ

メルペイでは、2020年7月7日から「定額払い(分割払い)」を開始し、ユーザーの獲得が順調に進捗しています。2020年9月からは「d払い」との共通QRコードでの利用が可能になったことで、メルペイ自体の利便性もぐっと向上しています。

なお、メルカリではメルペイを安心安全に利用できるよう不正利用対策として、本人確認(eKYC)を強化しています。そのため、最大で約20億円のシステム等への追加投資を予定していると発表しています。

●メルカリUS

メルカリUSでは、より簡単で安全に売れるマーケットプレイス「Mercari」を展開しています。認知度の向上と出品、配送の最適化に注力したことで、流通取引総額が307億円(為替レートは期中平均為替レート106.22円で換算)となり、前年同期比で190億円増(165%増)と大きく伸びました。

なお、従来は決済手数料を無料としていましたが、新規の出品に対しては2020年10月1日から、すべての出品に対しては2020年11月2日から、売価の2.9%及び30セントの決済手数料を徴収しています。これにより、収益基盤の強化が期待されるところです。

さらなるユーザーの拡大や、プロダクトに機能強化にも注力しています。そのひとつが人気商品の需要と供給を予測する「Demand Prediction」です。これをユーザー出品管理画面に表示することで、売り手のサポートを行っています。

4.流通取引総額はメルカリJPで前年比+20%以上、メルカリUSで同+50%以上を想定

前述のように、メルカリでは、新型コロナウイルス感染拡大の今後の影響が不透明だとして、2021年6月期の業績予想を出していません。

とはいえ、同社では、目標値の変更はなく、流通取引総額はメルカリJPで前年比+20%以上、メルカリUSで同+50%以上が想定されているとし、順調な成長を示唆しています。

2四半期連続の黒字となった営業利益については、「機会と見れば、トップラインの更なる成長を最優先した投資加速によって、赤字になる可能性がある点に変更はない」としています。言い換えれば、同社はまだまだ積極的に投資を行い、いっそうの拡大を目指すフェーズにあるといえるでしょう。そのため、定常的な黒字化を期待するのは時期尚早なのかもしれません。

なお、同社では、第2四半期以降は、クリスマスやお正月、バレンタインデーなどのイベントも多く、ハイシーズンであることから売上高が増加する一方で、人件費率や広告宣伝比率が低下するとみられ、30%以上の調整後営業利益率の達成が期待されるとしています。

投資家にとっては、現在は、将来の成長をじっくり見守る段階と言えるのではないでしょうか。

●メルカリJP

前述のとおり、フリマアプリ「メルカリ」は、月間出品者数1,755万人、累計出品数15億品以上のフリマアプリの最大手サービスです。ライバルには、楽天グループの「ラクマ」や、オークションサイトで国内最大級の「ヤフオク!」のフリマ出品、スマホ決済サービス「PayPay」の「PayPayフリマ」などがあります。

個人間取引市場は拡大すると見られるものの、強力なライバルがいる市場にあってどう事業を拡大していくのかが注目されるところです。

メルカリでは、「出品意向はあるが未出品の人」が3,610万人いると見積もっています。この層をいかに掘り起こすかが、さらなる成長のポイントといえそうです。

同社では、さらなる集客をめざし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年2月から中断していた「メルカリ教室」について、2020年9月18日からオンライン版を本格展開しています。これにより、低コストで効率の良い出品促進の実現が期待できそうです。

生活動線上での利用者とメルカリとのタッチポイントをつくることで、潜在顧客の開拓にも力を入れています。そのひとつとして、メルカリの使い方の説明や出品サポートなどを体験できるリアル店舗「メルカリステーション」の展開を開始。2020年6月には新宿マルイ本館に、2020年7月にはららテラス武蔵小杉に出店しました。

2020年10月には、店舗の空きスペース2畳から展開できる共創型の「メルカリステーション」を「Panasonic KURA_THINK(パナソニック クラシンク)」にもオープン。さらに、無人投函ボックス「メルカリポスト」の運用も始まっています。

これらの取り組みによって、出品意向はあるものの、利用したことのなかった層、なかでもスマホなどIT機器に苦手意識を持つ層を発掘することができれば、売上増加につながることが期待できるでしょう。

2020年8月12日には、東南アジア、台湾で最大のマーケットプレイスである「Shopee」と連携し、越境ビジネスを強化しています。この連携によって日本では1年以上売れなかった高額な商品が売れるなど、新たな需要の創出にもつながっています。

●メルペイ

メルペイは、「J.D.パワー 2020年後期QRコード・バーコード決済サービス顧客満足度調査」で総合満足度第1位を評価を受けるなど、顧客利便性が高いサービスを提供しています。

前述の「定額払い(分割払い)」などによるメルカリとメルペイのシナジー強化も今後の注目ポイントと言えそうです。

●メルカリUS

「Demand Prediction」の提供開始などプロダクトの機能強化に加えて、配送の利便性向上にも力を入れています。2020年10月からは、即日配送サービス「Mercari Now」の運用をニューヨーク市のマンハッタンとブルックリンでも開始しています。また、2020年8月にはUPSでの発送にQRコード決済を導入し、紙での印刷が不要になったことも利便性向上につながっているようです。

●その他の取り組みと業績見通し

メルカリでは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションのもと、「循環型社会の実現」を目指しています。

そのひとつとして、2020年7月30日に社会にとって必要なマーケットプレイスを業界全体で目指す取り組みである「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」(座長:慶應義塾大学・大学院商学研究科准教授/ケンブリッジ大学訪問教授 梅津光弘氏)を設立。最終的なPrinciples(原理・原則)を今後公開する予定です。

また、循環型社会を実現するべく、2020年9月より希望する自治体等団体に売上金を寄付できる「メルカリ寄付」機能をスタートました。

メルカリで購入した製品を安全安心に使えるよう、該当製品を持っている出品者や購入者にリコール情報をピンポイントで届けるサービス「リコール品プログラム」も始まっています。

2020年11月27日の時点では、株価は調整局面にあるかに見えます。

同社は、フリマサービスの最大手企業ではあるものの、マーケットプレイスという事業自体が成長段階にあると考えられます。

今後は、国内での新規顧客獲得による市場の拡大や、台湾など海外での市場拡大、既にサービスを開始しているアメリカでの市場拡大を期待して、業績動向を注視しながら、超成長株への投資を行っているというスタンスを忘れずに投資に臨みたいものです。

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参考資料

2021年6月期第1四半期決算短信(日本標準)

四半期報告書-第9期第1四半期(令和2年7月1日-令和2年9月30日)

FY2021.6 1Q 決算説明会資料

FY2021.6 1Q 決算発表 FAQ

Mercari-Fact-book_jp

サステナビリティレポート 2020 / 2020 Sustainability Report_jp

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