こんにちは、Suiです。

今回は「決算短信をどのように読んでいくか」について書いていきたいと思います。

全体の流れ

(1)決算短信で見るポイント

(2)対象期間の確認

(3)売上、利益の確認

(4)通期予想に対する進捗

まずは決算短信で確認するポイントを説明してから、具体的に出前館(2484)の決算短信を一緒に見ていきたいと思います。

また、今回は基礎編としてまずは最低限チェックするべき部分をまとめていますが、次回は応用編として、さらに理解を深めるためにはどこを見ていくのがいいかをまとめる予定です。

基礎編も①と②に別れており、今回の基礎編①で短信の数字をチェックしたうえで、基礎編②で数字の変動要因を分析していきたいと思います。

(1)決算短信で見るポイント

・対象期間

これは当たり前かもしれませんが、対象企業が何月決算で今回の決算短信がいつの数字なのかをまず確認します。

・売上、利益の変化

基礎編として確認すべきはこの2つです。前年の同期間と比べて売上と利益がどう変化したかを把握する必要があります。

・通期予想に対する進捗

将来に目を向けると、通期の業績に対する進捗がどうだったかを確認します。

もちろん決算短信で他にも見るポイントはたくさんありますが、決算を見る1番の目的は対象企業の業績が良かったのか悪かったのかを確認することです。

そのために、まずは売上・利益がどう変化したかを確認して、その変化の要因を深掘りしていくイメージです。変化した要因の分析に関しては、決算短信以外にも説明会資料なども併せて見ていく必要があります。

それでは具体的に出前館の決算短信(2020年8月期 第3四半期)を使って各項目を見ていきたいと思います。

(2)対象期間の確認

基礎的な部分ですが、まずは今回の業績がいつの数字なのかを確認します。

慣れてくるとすぐにいつの数字なのかが分かりますが、最初は①何月決算か②何月から何月の業績なのかをしっかり確認することをお勧めします。

例えば今回の出前館の場合、決算期は8月決算で少し珍しいです。日本企業で多い3月決算の場合は、1Q=4-6月、2Q=7-9月、3Q=10-12月、4Q=1-3月でこれには慣れている方も多いかもしれませんが、決算期が3月以外の場合は確認した方が確実です。

出前館の場合、8月決算なので1Q=9-11月、2Q=12-2月、3Q=3-5月、4Q=6-8月となります。したがって、今回の3Q決算は2019年9月から2020年5月末までの決算です。これは決算短信の1ページ目に記載されてますので、まずここを確認しましょう。

<図表1>

対象期間を確認するもう一つの理由が、季節性やイベントの考慮です。

例えば今回の2020年3-5月の場合は大きなイベントや出来事としては、新型コロナウイルスによる(緊急事態宣言などの)影響が大きい期間になります。他にも小売の企業では年末年始が含まれる四半期は売上が大きくなるなど業界やビジネスモデル特有の季節性があります。

このように対象期間をチェックすることで、その時期に起きた出来事や影響を考慮して業績を見ることができます。

また、注意すべき点は決算短信に記載されている数字や情報は基本的に累計である点です。2020年3月~5月の情報が追加されてはいますが、短信に記載されているのは2019年9月〜2020年5月の累計9ヶ月の情報になります。

では3-5月の3Qだけの部分を見なくていいのか?という部分については、応用編で詳しく解説する予定です。

(3)売上、利益の確認

決算で確認すべきポイントは一言で言えば、業績が良かったか悪かったかです。その判断をする際に、まず見るのは売上と利益の変化になります。

変化を見るには①増収(増益)or減収(減益)か?②変化率が昨年と比較してどうか?の2つをまずチェックします。次に③通期予想に対する進捗はどうか?を確認していきますが、この「進捗」については(4)で説明します。

決算短信を読むゴールとしては、決算を見て「売上と利益がどう変化したのか、その原因は何だったか」を説明できれば決算の内容を理解できたと言えるでしょう。

まずは数字をチェックしてから、その原因を特定していきます。

そしてできれば③にあたる今後の予想を考えていくと良いでしょう。

それでは、出前館の決算を見ながら説明していきたいと思います。

まず決算短信のサマリー(最初のページ)で売上・利益の変化が確認できます。

<図表2>

昨年の3Q売上が+21%の伸びに対して、今年の3Q売上は+40%と大幅な増収で、かなり好調だったことが分かります。

企業の業界や規模、ステージにもよりますが、二桁成長(+10%以上)の増収増益であれば一般的には順調と言えるかもしれません。ただ、成長率の水準よりも重要なのが、前年の成長率を上回ったかどうかです。成長率は企業の成長スピードを表すため、特に企業の拡大期にあたるステージでは成長スピードが減速するのはかなり致命的です。

成熟した企業でも前年比で成長率が鈍化したということは売上が落ち始めている(=他社にシェアを奪われている)ことになるので、原因が一時的なものであるかどうか特定が必要です。

利益についても基本的には同じ考えで確認をしていきます。利益もサマリーで確認できます。短信には営業利益、経常利益、純利益が記載されてますが、個人的には営業利益を確認するのがオススメです。

その理由としては営業利益から純利益に向かっていくにつれて、一時的要因や特殊要因の影響が含まれるのが大きな理由です。最も分かりやすいのは経常利益と純利益の間にある特別利益・損失だと思います。営業利益と経常利益の間にある営業外収益・費用は一時的ではないものの、本業とは関連性がない損益で、例えば受取家賃などいわば副業、副収入のようなものです。本業であるメイン事業の業績を確認することが目的なので、その利益を見るためにはノイズが少ない営業利益が1番だと考えます。

それでは出前館の短信に戻ります。

基本的には売上の時と同じで①増益or減益か?②変化率が昨年と比較してどうか?を見ていきます。営業利益を見ると、今年は営業利益がマイナスになっています。その理由に関しては次回の変動要因の分析で詳しく見ていきますが、まず今回の決算は増収減益だったというのは押さえておきたいポイントになります。

通常、売上が増加していれば、費用がそれ以上に増加しない限りは増益になる可能性が高いです。今回の出前館で言えば、+40%の増収なのに減益になるのは増収以上にコストが増えた、しかも昨年はぎりぎり営業利益が出ていたのが営業赤字になるほどコストが増加したと解釈できます。

<図表3>

決算の結果を分類すると、①増収増益②増収減益③減収増益④減収減益の4パターンに分類されますが、このうち②増収減益と③減収増益は売上と利益のトレンドが逆になっています。この場合、今回の出前館のように、コストの部分で大きな変化があったことが想定されるのでその要因をしっかり見る必要があります。

コスト増加の部分やその要因については、次回の「基礎編②変動要因の分析」で詳しく解説していきます。

(4)通期予想に対する進捗

最後に通期予想に対する進捗度を確認します。

短信のサマリーの一番下には今期の業績予想(会社予想、通期予想と呼ぶ事が多いです)が記載されています。毎年4Qの決算時に翌年の目標として予想売上、予想利益(ガイダンス)が公表されます。

今回は2020年8月期の3Qなので、通常であればここに記載されている業績予想(4Qの目標)と3Q時点の売上を比較します。ただし、今年においては新型コロナウイルスの関係で業績予想を未定とする企業が多く、出前館も未定に変更しています。

そこで、あくまで参考ではありますが、2019年10月に開示された2019年8月期4Q決算短信に記載されている業績予想を見てみます。

この時の業績予想は売上93億円、営業利益-15億円という通期予想になっています。これを参考にして、3Q時点での進捗率を計算します。

売上は3Qの実績値である68億円を通期予想の93億円で割ると73.3%になります。単純計算で四半期ごと25%進んでいくとすれば3Q時点では75%が基準となり、少し足りないくらいの水準ですが特に問題はない水準だったと考えることができます。

ただし、企業や業界によっては売上や利益が特定の四半期に偏る場合があるので、単純計算ではなくその特徴を考慮して判断することが重要です。

営業利益に関しては予想は-15億円の赤字、実績は-16億円の赤字です。赤字の場合は少し計算しにくいですが、4Qで15億円の赤字予想が3Q時点でもうオーバーして16億円の赤字になっています。計画が変更されているとはいえ、当初予定を大きくオーバーしていることがわかります。

<図表4>

このように通期業績の予想を基準にして、決算短信の実績値がどれくらいの位置にあるか見ることで、通期業績の計画をクリアできるかの材料が見えてきます。通期業績を明らかに上回る進捗であれば上方修正も期待できる可能性がありますので、短信を見るときはぜひチェックしてみてください。

さて、今回は短信の読み方として、出前館の決算短信を使ってまず数字の確認などファクトチェックをしてきました。最後にポイントを簡単にまとめます。

<まとめ>

・2020.8期3Q決算は2019年9月〜2020年5月の累計9ヶ月の情報

・3Qは前年同期比で増収減益(売上:+40% 営業利益:赤字転落)

・進捗率は未定に変更する前の通期予想に対して売上73.3%、営業利益は超過ペース

次回の基礎編②ではこれらの数字を踏まえて、変化の要因などを見ていきたいと思います。

参考資料

2020年8月期 第3四半期 決算短信

2020年8月期 第2四半期決算説明資料